INFO 工場・倉庫の防犯カメラ、よくある課題とその解決策
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工場や倉庫は、防犯カメラを設置する環境として、かなり条件の厳しい場所です。
敷地が広いこと。守るべきものの多くが屋外や大きな建屋の中にあること。出入りする人と車両の種類が多いこと。そして、狙われやすい時間帯がいちばん暗いこと。この記事では、工場・倉庫でよく挙がる課題を整理し、それぞれどう考えるとよいかをまとめます。なお、この記事は一般の製造工場、物流倉庫、資材置き場、屋外ヤードを想定しています。食品工場の衛生管理については別の記事で整理しています。
■ 資産・侵入リスクへの対応
【「倉庫荒し」「工場荒し」は独立した犯罪類型です】
警察庁の犯罪統計では、侵入盗の手口が細かく分類されており、その中に「倉庫荒し」「工場荒し」という区分が設けられています。空き巣や事務所荒しとは別に集計されるだけの件数が、継続して発生しているということです。無人になる時間が長く、敷地が広く、外周から見通しにくい。この3つが揃う場所は、侵入する側から見れば条件が良い場所になります。
【金属・ケーブルの盗難が急増しています】
近年、大きく増えているのが金属盗です。警察庁の資料によると、金属盗は統計を取り始めた令和2年以降増加傾向にあり、令和6年は2万701件となりました。
被害の中身にも偏りがあります。令和5年の金属盗の被害総額は約132億8,700万円で、品目別では金属ケーブルが約109億8,100万円と全体の約8割を占めています。材質別では銅の被害が約97億7,900万円で、全体の約7割にのぼります。
地域も集中しています。令和5年の管区別の認知件数では、警視庁・関東管区が全体の62.6%を占め、茨城県、千葉県、栃木県、群馬県、埼玉県の上位5県だけで全体の約半数となっています。
こうした状況を受けて、令和7年6月には金属盗対策法が成立・公布されました。金属くずの買受業者への規制などを内容とするもので、令和8年6月に全面施行されています。国として対策が講じられる水準まで被害が増えている、という位置づけです。
この被害の特徴は、狙われるものが建屋の中ではなく、屋外の設備や配線だという点です。ヤードに積まれた資材、屋外の受変電設備、敷設されたケーブル。いずれも施錠で守ることができません。したがって、建屋の出入口を固めるだけでは対応にならない、というのが工場・倉庫の難しさです。
【出入りする人と車両の多さ】
工場や倉庫には、自社の従業員だけでなく、配送業者、メンテナンス業者、協力会社の作業員が日常的に出入りします。作業服を着ている人物を、その場で見分けることは困難です。何かあったときに「その時間、敷地に誰がいたか」を答えられる状態にしておくこと。これが、実務上いちばん効く備えになります。
■ カメラの機能で何ができるか(防犯・安全・運用)
工場・倉庫は、カメラの機能を活かしやすい環境です。人の目が届かない範囲が広く、監視すべき時間帯が長く、そして防犯以外の用途にも展開しやすいためです。
【境界を越えたら知らせる】
近年のカメラには、映像を解析して特定の状況を検知し、通知する機能を備えたものがあります。
工場・倉庫でまず有効なのが、区域や境界線を設定して、そこへの侵入や越境を検知する機能です。フェンスの内側、ヤードの外周、屋外設備の周囲といったラインを映像上に設定しておき、そこを越えた対象があれば通知する、という使い方になります。
録画を後から確認するだけでなく、起きている最中に気づける状態をつくれる点が、従来の運用との違いです。
【人と車両を区別して、誤報を減らす】
屋外に設置したカメラの運用でよく問題になるのが、誤報の多さです。動きに反応して通知する仕組みでは、風で揺れる草木、雨、小動物、虫にも反応します。通知が多すぎると、やがて誰も見なくなります。
映像に映った対象が人なのか車両なのかを判別できる機能を使えば、人が入ったときだけ通知する、といった設定ができます。屋外での運用を現実的なものにするうえで、この差は大きいと思います。
【立入禁止区域の管理】
危険区域や関係者以外の立入を制限したい区域について、そこに人が入った際に検知して通知する、警告音を鳴らすといった運用も可能です。
【ヘルメットの未着用を検知する】
ここからは、防犯とは別の使い方です。作業エリアでヘルメットを着用していない人物を検知し、管理者へ通知する機能に対応した機種があります。作業の途中で外してしまった状態も対象になります。ヘルメットの着用は、落下物や頭部への衝撃から作業者を守るためのものです。しかし現場では、暑い時期や短時間の作業で外してしまう、という状況が起こります。巡回している人の目に入ったときだけ注意する、という運用では限界があります。
薄暗い倉庫内や屋外でも検知に対応するとされており、常時人が見ていなくても、着用が徹底されない状態に気づけるようになります。なお、この機能は安全管理を目的としたものであり、従業員の勤務評価に使うものではありません。導入する際は、何のために設置するのかを事前に周知しておくことが前提になります。
【構内を走る人を検知して、その場で注意を促す】
構内で走っている人物を検知する機能もあります。ネットワークスピーカーと連携させることで、検知した際に「走らないでください」といった音声を自動で流す、という運用が可能です。工場や倉庫の構内では、フォークリフトや配送車両と人が同じ空間を通行します。曲がり角で走っている人と車両が出会えば、避けきれません。管理者に通知が届いてから対応するのでは間に合わない場面で、その場で音声が流れることに意味があります。
ただし、この機能には限界があります。メーカー自身が、走り検知のアルゴリズムは確実性が高いものではなく、誤検知や未検知のリスクがあることを明示しており、従業員に対する抑止効果として利用することを推奨しています。つまり、走った人を漏れなく捉える仕組みではありません。「見られている、声がかかる」という状態をつくることで、走らない習慣を促すための仕組みと考えるのが実態に近いと思います。
【入退場車両の記録と、滞在時間の把握】
車両の出入りが多い事業所では、ナンバーを読み取って記録する仕組みを使うことができます。事前に登録した車両番号と照合し、未登録の車両を検知して知らせる、といった運用です。
守衛による目視確認や記録簿への手書きと比べて、記録の抜けが生じにくく、後から特定の車両を検索できる点が違います。
もう一つ、防犯とは別の使い方があります。入場した時刻と退場した時刻が自動的に残るため、車両ごとの滞在時間が分かる点です。
荷役の待機がどの時間帯に集中しているか、特定の業者の滞在が長くなっていないか、ゲート前で詰まりが起きている時間はいつか。これらは、これまで担当者の感覚で語られてきた部分です。記録が数字として残れば、受け入れ時間の割り振りや、バース割当ての見直しといった検討の材料になります。防犯目的で設置した仕組みが、そのまま運用改善のデータ取得を兼ねる形になります。詳しくは別の記事で整理しています。
・「誰の車が、いつ入ったか分からない」を解決する|構内車両管理の実務と記録の残し方
【複数拠点の管理】
複数の工場や倉庫を運営している場合、それぞれの映像を別々に確認するのは負担になります。離れた場所から状況を確認する仕組みについては、別の記事で整理しています。
■ 機器選定の考え方
工場・倉庫は敷地が広く、環境も屋内外にまたがるため、機器の選び方が結果を大きく左右します。
【広い敷地を1台で撮ろうとしない】
カメラの性能を語るとき、画素数だけが取り上げられがちです。しかし同じ画素数のカメラでも、広い範囲を撮れば対象1つあたりに割ける情報量は減り、狭い範囲を撮れば増えます。画素数だけでは、実際に何が確認できるかは決まりません。これを整理した国際的な指標として、DORIと呼ばれる考え方があります。映像上で1メートルの幅を何ピクセルで表現できているかを基準に、確認できる内容を4段階に分けたものです。
・検知(人や車両が存在するかどうかが分かる)
・観察(衣服など、その人の特徴的な様子が分かる)
・識別(以前に見た人物と同じかどうかを高い確度で判断できる)
・特定(個人を特定できる)
広い敷地を1台のカメラでカバーしようとすると、映ってはいるが検知しかできない映像になります。「侵入があったことは分かるが、誰かは分からない」という状態です。現実的な組み合わせは、広い範囲を1台で押さえて状況を把握し、必ず通る地点や重要な設備には別途カメラを置いて、確認できる水準を上げる、という設計になります。すべての場所を最高水準で揃えると、費用も録画容量も跳ね上がります。
【夜間にどう映るか】
金属盗にせよ侵入にせよ、狙われるのは無人になる夜間です。つまり、撮りたい時間帯がいちばん暗いという条件になります。
暗い場所での撮影方式には、赤外線を照射して白黒で撮るものと、わずかな光があればカラーのまま撮れるものがあります。この違いは実務上大きく、服の色、車体の色、作業車の種類といった情報は、白黒の映像では判別できません。後から何を確認したいかによって、選ぶ方式が変わります。屋外ヤードのように既存の照明が乏しい場所では、カメラの方式だけでなく、照明を足すかどうかもあわせて検討することになります。
【屋外設置に伴う配線と電源】
建屋から離れたヤードやフェンス沿いにカメラを設置する場合、そこまで配線を引くことになります。既存の照明用ポールや構内の支柱を利用できるか、電源をどこから取るか、配線をどう保護するかが、費用と工期を左右します。ネットワークカメラには、LANケーブル1本で映像の伝送と給電を同時に行う方式に対応しているものがあります。カメラごとに電源を用意する必要がなくなるため、配線が長くなりやすい環境では工事の負担を抑えられます。
ただし、この方式にも1本あたりの距離の上限があります。広い敷地では、途中に機器を挟む、別の伝送方式を併用するといった検討が必要になる場合があります。このあたりは図面だけでは判断がつきにくく、現地を見たうえでないと確定できない部分です。
【録画期間と容量】
録画をどれだけ遡って確認できるかは、カメラの台数、画素数、録画の設定、保存装置の容量で決まります。工場・倉庫の場合、被害に気づくまでに時間がかかることがあります。屋外のケーブルや、普段動かさない資材の異常は、翌日には気づかないかもしれません。何日前まで遡って確認できる必要があるかを先に決めて、そこから構成を逆算するのが現実的です。
【既存設備からの更新】
すでにカメラが入っている場合、既存の配線を流用できることがあります。台数を増やしたい、夜間の映りを改善したい、検知機能を使いたいといった目的であれば、すべてを引き直さずに済む可能性があります。
■ 台数の考え方
「敷地全体をくまなく撮りたい」という発想で進めると、屋外中心の広い環境では台数も配線も一気に増えます。一方で絞りすぎると、肝心の場面が映っていないということになりかねません。目安として、次のような段階で考えることができます。
【出入口と建屋周りを押さえる】
最小構成です。敷地に入る人と車両、そして建屋の出入口という、必ず通る地点から押さえます。
【ヤード・資材置き場・屋外設備を押さえる】
施錠で守れない場所を加えます。金属・ケーブルの被害に備えるのは、主にこの範囲です。
【外周と複数拠点をカバーする】
敷地の外周全体に検知を効かせたい場合や、複数の拠点を運営している場合は、台数が増え、拠点をまたいだ一元管理も検討対象になります。
どの段階が適切かは、敷地の広さ、屋外に置くものの価値、何を優先したいかによって変わります。現地を確認したうえで、動線と工程を踏まえて設計するのが基本的な進め方になります。
■ おわりに
工場・倉庫のカメラは、映像を残すことだけを目的にしたものではありません。屋外に置かれたものを守ること、出入りする人と車両を記録すること、異常が起きている最中に気づける状態をつくること、そして安全管理や運用の改善に使うこと。それぞれに異なる課題があります。
特に屋外中心の環境では、「どこに何台置くか」より前に、「夜間にどう映るか」「何を検知したいか」を決めることが、結果を左右します。まずは自社にとって何が課題なのかを整理し、そのうえでどこにどんな機能が必要かを検討することをおすすめします。
株式会社ジェイセキュリティでは、防犯設備士が現地の状況をうかがったうえで、動線や運用に配慮した構成をご提案しております。工場・倉庫の防犯カメラについてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
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※記載の課題と対応の考え方は一般的な整理です。実際に必要な構成は、施設の規模、業態、既存設備の有無などにより異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※統計は警察庁の公表資料に基づく参考値です。調査時点・対象により数値は変動します。
※法令および施行の状況は改正により変わる可能性があります。最新の情報は警察庁の公表資料でご確認ください。
※搭載されている検知機能などは機種により異なります。対応可否については個別にご確認ください。
※AIによる検知機能の精度は、設置環境、設置高さ、角度、照明条件などにより変動し、誤検知や未検知が生じる場合があります。人による確認を代替するものではありません。
※走り検知については、メーカーにおいても確実性が高いものではないとされており、誤検知および未検知が生じます。抑止を目的とした運用を前提にご検討ください。
※従業員を対象とする検知機能を導入する際は、目的の周知など、労務上の配慮についてもあわせてご検討ください。
※DORIは国際規格IEC/EN 62676-4に基づく指標です。実際に確認できる内容は、被写体までの距離、レンズの画角、照明条件などにより変動します。
※ナンバー読み取りの対応可否、対応可能な距離や設置条件は、機種および現場の状況により異なります。導入をご検討の際は個別にご確認ください。
※配線可能距離、費用、対応可能な解像度は、機器の仕様および現場の状況により異なります。
※既存配線を流用できるかどうかは、配線の種類や状態、既存機器の仕様により異なります。現地確認が必要です。
※録画期間の目安は一般的な設計例です。必要な保存容量は、台数、画素数、録画設定により変動します。

