INFO 食品工場の防犯カメラ、HACCPとフードディフェンスへの活用
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食品工場における防犯カメラというと、部外者の侵入を防ぐという従来型のイメージが強いかもしれません。ただ、食品を扱う工場では、それ以外にも果たすべき役割があります。2021年6月、改正食品衛生法の完全施行により、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられました。日々の衛生管理を記録し、検証できる状態にしておくことが求められています。
この記事では、食品工場における防犯カメラの役割を、HACCPおよびフードディフェンスという2つの観点から整理します。
■ 資産・侵入リスクへの対応(フードディフェンス)
まず押さえておきたいのが、フードディフェンスという考え方です。
フードディフェンスとは、従業員や部外者による意図的な異物混入から食品を守るための取り組みを指します。厚生労働省は、食品製造工場向けの「食品防御対策ガイドライン」を公表しており、フードディフェンスへの対応を後押ししています。
これは、後述するHACCPとは異なる目的を持っています。HACCPが対象とするのは、あくまで意図しない異物混入や衛生管理上の不備です。一方、フードディフェンスが対象とするのは、悪意を持った人物による意図的な行為です。両者は補完関係にあり、どちらか一方だけでは食品の安全を十分に確保できません。
【部外者の侵入防止】
敷地や工場建屋への部外者の侵入を防ぐことは、フードディフェンスの基本です。出入口や敷地境界の監視は、外部からの脅威に対する備えになります。
【内部不正への抑止】
フードディフェンスが想定するのは、外部からの脅威だけではありません。従業員や関係者による意図的な行為も対象に含まれます。カメラが設置されていること自体が、不適切な行為への抑止力として働く面があります。
■ 対外説明・コンプライアンスリスクへの対応(HACCP)
HACCPは、意図しない異物混入や衛生管理上の不備を防ぐための衛生管理手法です。食品事業者の規模に応じて、「HACCPに基づく衛生管理」と、より簡略化した「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2つのアプローチが用意されています。
【重要管理点の記録補完】
HACCPでは、重要管理点(CCP)を継続的にモニタリングし、記録することが求められます。温度計などによる数値データの管理に加えて、実際の作業風景を映像として記録しておくことで、数値だけでは把握しきれない状況を後から確認できます。
【異物混入時の検証】
万が一、製品に異物が混入していたという指摘を受けた際には、迅速な原因究明が求められます。映像記録があれば、対象の製品がいつ、どの工程で製造されたかを確認する材料になります。
ただし、異物のような細かい対象を確認するには、ズームしても鮮明さを保てる、ある程度の解像度が必要になります。この点については、別の記事で整理しています。
・防犯カメラの画素数とレンズはどう選ぶか|数字だけでは決まらない「見え方」の話
【外部監査への対応】
ISO22000やFSSC22000といった食品安全の国際規格では、監視体制の構築が審査項目に含まれる場合があります。映像による記録は、外部監査の際に、管理体制の透明性を示す材料としても役立ちます。
■ オペレーション上の課題
日々の運用に関わる課題です。
【衛生工程の確認】
エアシャワー室での通過手順、前室での手洗いや粘着ローラーによる身だしなみチェックなど、食品工場には日常的に確認すべき衛生工程が複数あります。人の目による巡回確認には限界があり、特に少人数体制や夜間帯では見落としのリスクが高まります。カメラによる記録は、こうした工程が手順どおりに行われているかを、後から確認する手段になります。
【誤出荷の早期発見】
商品の誤出荷が起きた際、早急に状況を確認できることは、被害を最小限に抑えるうえで重要です。出荷エリアの記録があれば、いつ、どの商品が、どのように出荷されたかを追跡しやすくなります。
■ 設置環境への配慮
食品工場には、設置環境において特有の配慮が必要な場所があります。
【防水・防塵性能】
洗浄や殺菌が日常的に行われるエリアでは、水や薬剤に対する耐性が求められます。防水・防塵性能に優れたカメラでなければ、故障の原因になりやすくなります。
【冷蔵・冷凍庫での結露】
冷蔵庫や冷凍庫のように、周囲との温度差が大きい場所では、レンズが結露して映像が白く曇ってしまうことがあります。また、配線のために冷蔵庫の壁面に穴を開けると、そこから暖かく湿った空気が入り込み、結露や凍結の原因になることもあります。
こうした環境向けに、低温での動作を想定して設計されたカメラも用意されています。対応する温度範囲は機種によって異なりますので、設置環境の条件をお伝えいただいたうえで、適した機種をご提案いたします。
■ 台数の考え方
「工場全体にくまなくカメラを付けたい」という発想で進めると、台数も費用もかさみます。一方で、台数を絞りすぎると、確認したい工程を撮り逃すことになりかねません。
目安として、次のような段階で考えることができます。
【出入口と敷地境界を押さえる】
最小構成です。部外者の侵入防止という、フードディフェンスの基本的な目的に対応します。
【主要な工程エリアを押さえる】
出入口だけでなく、エアシャワー室や前室、重要管理点となる工程も合わせて記録します。HACCPの記録補完まで含めた構成です。
【工場全体・複数拠点をカバーする】
工場の規模が大きかったり、複数拠点を展開していたりする場合は、台数も増え、遠隔での一元管理も検討対象になります。
どの段階が適切かは、工場の規模や、何を優先したいかによって変わります。現地を確認したうえで、動線と工程を踏まえて設計するのが基本的な進め方になります。
■ 検知の精度について
工場内の検知においても、人や車以外の動きに反応してしまう誤検知が課題になることがあります。誤検知が多いと、通知そのものを確認しなくなり、本来の目的が果たせません。この点については、AIによる検知の仕組みを別の記事で整理しています。
■ おわりに
食品工場の防犯カメラは、部外者の侵入防止だけを目的にしたものではありません。フードディフェンスによる意図的な異物混入への備え、HACCPの記録補完、日々の衛生工程の確認、そして冷蔵・冷凍庫のような特有の設置環境への配慮。それぞれに異なる課題があります。
まずは自社にとって何が課題なのかを整理し、そのうえでどこにどんな機能が必要かを検討することをおすすめします。
株式会社ジェイセキュリティでは、防犯設備士が現地の状況をうかがったうえで、動線や工程を踏まえた構成をご提案しております。食品工場の防犯カメラについてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
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※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。HACCPおよび食品衛生法の解釈は、ガイドラインの更新により変わる可能性があります。最新の情報は厚生労働省の公表資料でご確認ください。
※記載の課題と対応の考え方は一般的な整理です。実際に必要な構成は、工場の規模、業態、既存設備の有無などにより異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※搭載されている検知機能などは機種により異なります。対応可否については個別にご確認ください。
※低温環境や高温環境への対応可否、対応する温度範囲は機種により異なります。個別にご確認ください。
※台数の目安は一般的な考え方を示したものであり、必要台数は現地調査に基づき決定されます。

