INFO 防犯カメラと個人情報保護法|設置前に押さえる基本と顔認証カメラの注意点
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防犯カメラを設置するとき、「撮影した映像は個人情報にあたるのか」「掲示は必要なのか」「録画データはいつまで保存してよいのか」といった疑問が出てきます。
これらについては、個人情報保護委員会が「カメラに関するQ&A」を公開しており、考え方が整理されています。ここでは、その内容をもとに、事業者として押さえておきたい基本を整理します。あわせて、顔識別機能付きカメラ(顔認証カメラ)について、従来型の防犯カメラとは義務の内容が異なる点も解説します。
■防犯カメラの映像は「個人情報」にあたる
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、防犯カメラに記録された情報等で本人が判別できる映像情報は、個人情報に該当する事例として示されています。つまり、カメラを設置して人が映る映像を記録している時点で、事業者は個人情報を取り扱っていることになります。
■利用目的の特定と、通知・公表が不要になる場合
個人情報を取り扱う事業者は、利用目的をできる限り特定し、その範囲内で利用しなければなりません。
そのうえで、利用目的は本人に通知するか公表するのが原則です。ただし従来型の防犯カメラについては、Q&Aで次のように整理されています。
【従来型防犯カメラの場合】
・カメラの設置状況等から利用目的が防犯目的であることが明らかである場合には、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」(法第21条第4項第4号)に当たる
・この場合、利用目的の通知・公表は不要と考えられる
ここでいう「従来型防犯カメラ」とは、防犯目的で設置されているカメラのうち、撮影した画像から顔特徴データの抽出を行わないものを指します。
■「防犯カメラ作動中」の掲示は必要か
利用目的の通知・公表が不要でも、掲示の話は別に残ります。
事業者は、偽りその他不正の手段によって個人情報を取得してはならないとされています(法第20条第1項)。このため、カメラの設置状況等から、自分の個人情報が取得されていることを本人が容易に認識できるとはいえない場合には、容易に認識できるようにするための措置を講じなければなりません。
具体的な例として、Q&Aでは、防犯カメラが作動中であることを入口やカメラの設置場所等に掲示することが挙げられています。
さらに、外観上カメラであることが明らかであるなど、本人が容易に認識できる状況であっても、掲示等の措置を講じることで、より容易に認識できるようにすることが望ましいとされています。
つまり「掲示は必ず必要」と一律に言えるものではありませんが、実務としては掲示しておく方が望ましい、という整理になります。
■顔識別機能付きカメラは、扱いが異なる
顔識別機能付きカメラシステムとは、顔画像を撮影するカメラと、撮影した顔画像から顔特徴データを抽出して顔識別を行うシステムのことです。
こちらは従来型の防犯カメラと同じ扱いにはなりません。Q&Aでは、次の点が示されています。
【利用目的の特定】
・どのような取扱いが行われているかを本人が利用目的から合理的に予測・想定できる程度に特定する必要がある
・従来型と異なり、犯罪防止目的であることだけではなく、顔識別機能を用いていることも明らかにして利用目的を特定しなければならない
【利用目的の通知・公表】
・設置されたカメラの外観等からは、犯罪防止目的で顔識別機能が用いられていることを認識するのが困難である
・このため「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」には当たらず、利用目的を本人に通知するか公表しなければならない
・登録された顔特徴データ等が保有個人データに該当する場合には、保有個人データに関する事項の公表等(法第32条)も必要となる
【掲示することが望ましい情報】
本人から理解を得るため、できる限り分かりやすく情報提供を行う観点から、次の内容を入口やカメラの設置場所等に掲示することが望ましいとされています。
・システムの運用主体
・取り扱われる個人情報の利用目的
・問い合わせ先
・さらに詳細な情報を掲載したウェブサイトのURL、またはQRコード等
【照合用データベースの登録基準】
検知対象者のデータベースに個人情報を登録する場合、登録基準の作成にあたっては、対象とする犯罪行為等をあらかじめ明確にし、利用目的の達成に必要な範囲を超えて登録されることのないようにしなければなりません。
Q&Aでは、犯罪行為等の防止を目的とするときは、登録対象者を当該犯罪行為等を行う蓋然性が高い者に厳格に限定し、登録時にもその蓋然性を厳格に判断することが望ましいとされています。あわせて、担当者が誰であっても同様の判断ができる文書化された統一的な基準を作成し、その基準に従って運用できる体制を整備することも重要とされています。
なお、登録された顔特徴データ等が保有個人データに該当する場合、開示請求・訂正等の請求・利用停止等の請求に対しても、法令に基づき適切に対応する必要があります。
顔認証カメラは「設置すれば終わり」ではなく、運用ルールと体制まで含めて設計する必要がある、という点が従来型との大きな違いです。
■防犯目的で撮った映像を、マーケティングに使えるか
AIカメラには、来店客の性別や年齢層を推定する機能や、人数をカウントする機能を備えたものがあります。防犯目的で導入したカメラを、そのまま販促や店舗分析に使えないか、という疑問が生じます。
この点については、Q&Aで明確に示されています。
・当初、防犯目的のために取得したカメラ画像やそこから得られた顔特徴データを、マーケティング等の商業目的のために利用する場合には、あらかじめ本人の同意を得なければならない(法第18条第1項)
防犯目的で設置したカメラの映像を、後から商業目的に転用することはできない、という整理です。商業目的での活用を想定している場合は、導入の段階から利用目的を設計しておく必要があります。
■録画データの保存期間の考え方
保存期間について、Q&Aでは次のように示されています。
・利用の必要性を考慮して保存期間を設定する
・個人データを利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めなければならない(法第22条)
「何日間保存すればよい」という一律の日数が法律で定められているわけではありません。何のために録画しているのか、その目的から逆算して期間を決め、社内のルールとして明文化しておくことになります。
■安全管理措置|ネットワークカメラで特に注意する点
カメラ画像や顔特徴データが個人データに該当する場合、事業者は安全管理措置を講じる義務があります(法第23条)。Q&Aでは、次の5つの区分で例が示されています。
【組織的安全管理措置】
・取り扱う情報システムを使用できる従業者を限定する
・事業者内の責任者を定める
・管理者や情報の取扱いに関する規程等を整備する
【人的安全管理措置】
・従業者に対する適切な研修を実施する
【物理的安全管理措置】
・カメラや、画像データ等を保存する電子媒体等の盗難・紛失等を防止するため、設置場所に応じた安全管理を行う
【技術的安全管理措置】
・情報システムを使用して取り扱う場合や、IPカメラ(ネットワークカメラ、Webカメラ)のようにネットワークを介して画像等を取り扱う場合に、システムへの技術的なアクセス制御や漏えい防止策を講じる(パスワード設定等がアクセス制御のために適切な場合はそれも含む)
・アクセスログの取得・分析により、不正利用の有無を監視する
【外的環境の把握】
・外国において個人データを取り扱う場合、その国の個人情報の保護に関する制度等を把握したうえで、必要かつ適切な措置を講じる
このうち技術的安全管理措置は、設置工事と初期設定の段階で決まる部分が多くあります。初期パスワードのまま運用されている、閲覧権限が全員共通になっている、といった状態は、後から気付いても運用の見直しが必要になります。設置の段階で、誰がどの映像を見られるようにするかを決めておくことが現実的です。
なお、顔特徴データについては、不変性が高く、個人の行動の追跡が可能となるという性質も踏まえて措置を講じることとされています。また、データベースを構築していない場合、法第23条の安全管理措置が直接適用される対象ではないものの、映像が漏えい等することがないよう、上記の各種措置を参考として適切に取り扱うことが望ましいとされています。
■よくある誤解
【誤解1】犯罪行為が映った映像は要配慮個人情報になる
Q&Aでは、単に防犯カメラの映像等で犯罪行為が疑われる映像が映ったのみでは、犯罪の経歴にも刑事事件に関する手続が行われたことにも当たらないため、要配慮個人情報には該当しないとされています。
【誤解2】録画した映像はすべて個人情報データベース等にあたる
特定の個人を識別することができる映像情報であれば個人情報には該当しますが、特定の個人情報を検索できるように体系的に構成されたものでない限り、個人情報データベース等には該当しないと解されています。記録した日時で検索できても、特定の個人に係る映像を検索できない場合は該当しないとされています。ただし、個人情報を取り扱っていること自体は変わりません。
【誤解3】掲示さえしておけば、あとは自由に使える
掲示は、本人が撮影を容易に認識できるようにするための措置です。利用目的の範囲を超えた利用や、商業目的への転用が認められるわけではありません。
■2026年の法改正について
個人情報保護法については、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」が2026年7月10日に成立し、同年7月17日に公布されています。
個人情報保護委員会は、施行に向けて政令・委員会規則・ガイドライン等の整備を進めるとしています。カメラの取扱いに関する解釈も、今後の整備状況によって更新される可能性があります。導入・運用を検討される際は、最新の情報をご確認ください。
■まとめ
・本人が判別できる防犯カメラの映像は個人情報にあたる
・従来型の防犯カメラは、設置状況から防犯目的が明らかであれば利用目的の通知・公表は不要とされる
・撮影されていることを容易に認識できない場合は、掲示等の措置が必要
・顔識別機能付きカメラは、利用目的の通知・公表が必要で、登録基準や運用体制の整備も求められる
・防犯目的で取得した映像を商業目的に使うには、あらかじめ本人の同意が必要
・保存期間は目的から逆算して設定し、不要になったら遅滞なく消去する
・ネットワークカメラでは、アクセス制御・権限設定・ログ監視が安全管理措置として挙げられている
閲覧権限は、録画機側のユーザー設定のほか、遠隔監視用のクライアントアプリや統合管理ソフトウェアの権限管理機能でも設定できます。誰がどの映像を見られるようにするかは、導入の段階で決めておくことができます。
ジェイセキュリティでは、防犯設備士がカメラの配置や画角に加えて、これらの設定についてもご相談を承っています。設置後の運用を見据えた構成をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。現地調査・お見積もりは無料です。
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。個人情報保護法の解釈は、ガイドラインやQ&Aの更新により変わる可能性があります。また、自治体によっては防犯カメラの設置・運用に関する条例やガイドラインが定められている場合があります。実際の運用にあたっては、最新の公表資料および設置地域の定めをご確認ください。個別の法的判断については、専門家にご相談ください。
【参考】
・個人情報保護委員会「カメラに関するQ&A」(『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&Aより抜粋)
・個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」
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