INFO 録画映像を「探せる」状態にする|AI検索とストレージコストの実務
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防犯カメラを導入したあと、実際に映像を見る場面はそれほど多くありません。多くの場合、カメラは黙って録り続けているだけです。
問題は、何かが起きたときに起こります。「先週の水曜あたり、荷物が一つ足りなかったらしい」「駐車場で当て逃げされたと言われている」「昨日の夕方、来客とトラブルがあった」。こうした申し出を受けて映像を確認しようとしたとき、担当者は膨大な録画データの前で立ち尽くすことになります。録画は残っています。しかし、必要な場面が見つかりません。
この記事では、録画映像を「探せる」状態にするための考え方と、それにともなって出てくる録画容量の課題について整理します。すでにカメラを運用されている方を想定した内容です。
■ これまで、映像はどうやって探していたか
まず、従来の探し方を確認しておきます。新しい機能の価値は、これと比べたときに見えてくるためです。
【時刻を指定して再生する】
最も基本的な方法です。おおよその時刻を指定し、そこから再生して確認します。
この方法が成立するのは、発生時刻が分かっている場合だけです。実際には「先週のいつか」「昼過ぎだったと思う」といった曖昧な情報しか得られないことが少なくありません。範囲が広がるほど、確認にかかる時間は伸びていきます。
【動体検知の記録を追う】
動きがあった時間帯だけを抽出して確認する方法です。何もない時間を飛ばせるため、時刻指定より効率的です。
ただし、屋外では検知の記録そのものが膨大になります。風で揺れる草木、雨、小動物、虫、通り過ぎる車のライト。これらすべてが「動き」として記録されるため、結局は大量の候補を一つずつ確認することになります。
【カメラを1台ずつ切り替える】
敷地内を移動した人物や車両を追う場合、複数のカメラをまたいで確認する必要があります。出入口で映った人物が、どの経路を通って、どこへ向かったのか。これを知るには、カメラを切り替えながら時間軸を前後させる作業を繰り返すことになります。台数が多い施設ほど、この作業は現実的でなくなります。
【結果として起きていること】
メーカーであるHIKVISIONも、この点を課題として明示しています。インシデントの調査において、警備担当者が映像を1コマずつ手作業で確認するのに何時間も費やしているなど。映像を残すことと、映像から必要な情報を取り出せることは、別の問題です。前者は機器を設置すれば実現しますが、後者はそうではありません。
■ 探し方の選択肢
近年のレコーダーには、この作業を軽くするための機能が搭載されています。HIKVISIONの製品では、主に次の3つです。
置き換えの関係ではなく、目的によって使い分けるものだと考えるのが実態に近いと思います。
【スライス再生】
サムネイル画像を日付、時間、分の単位で一覧表示し、静止画から目的の映像を探す機能です。たとえば物品の盗難や紛失が発生した場合、1分あたり60枚の静止画を表示させ、物が見えなくなった時間帯だけを特定してから再生する、といった使い方ができます。「いつ無くなったか」が分からない状況で、範囲を絞り込むための機能です。映像を再生せずに、静止画を並べて目で追う。原始的に見えますが、時刻の手がかりがまったくない場合には有効です。
【AcuSearch】
映像に映っている人物や車両を選択すると、その対象の外観や姿から類似する人物をサムネイル画像で表示し、関連する映像を一覧できる機能です。録画の再生画面からだけでなく、ライブ映像に映っている人物からも起動できます。「いま映っているこの人が、他にいつ、どこに映っていたか」を追える、ということです。複数のカメラを1台ずつ切り替えて追跡していた作業が、対象を選ぶ操作に置き換わります。
【AcuSeek】
2025年4月にリリースされた機能で、探したいものを言葉で入力して検索します。「赤いジャケットの男性」「黒いリュックの自転車の人」といった記述で、目的の人物・車両・物体・イベントを絞り込めます。あらかじめ用意された条件から選ぶのではなく、文章で指定できる点が従来と異なります。
この機能は、HIKVISIONが独自に開発した大規模AI「Guanlan(観瀾)」によって実現しています。数十億枚の画像と数兆単位のテキストから学習したマルチモーダルAIモデルが、画像の輪郭・色・質感といった視覚情報と、言語の構文や意味構造を融合することで、テキストと映像を照合する仕組みです。
【3つの関係】
AcuSeekとAcuSearchは、対立するものではありません。HIKVISIONの説明では、AcuSeekが時間や場所といった条件から特定の特徴を持つ対象を識別し、続いてAcuSearchがその対象を全てのシーンから割り出して、出現のタイムラインと関連する映像を提示する、という2段階の流れが示されています。言葉で絞り込み、対象を特定し、その対象を追跡する。この流れの中で、それぞれが役割を持っています。
■ 施設別に見た活用の場面
機能の説明だけでは、実際にどう役立つのかが見えにくいと思います。施設ごとの具体的な場面を挙げます。
【物流倉庫】
誤配送の申し出があったとき、該当する荷物がいつ、誰によって、どのトラックに積まれたかを確認する場面です。伝票番号は分かっても、それが映像のどこに映っているかは分かりません。荷物や作業者を対象として追跡できれば、確認の手順が変わります。
倉庫の防犯カメラ全般については、別の記事で整理しています。
【工場・工業団地】
ヘルメットを着用していない作業者や、禁煙区域での喫煙といった、安全管理に関わる場面の確認に使われています。
「ヘルメットを着けていない人」という条件で過去の映像を検索できれば、日常的な巡回では気づけなかった状況を把握できます。これは事後の確認だけでなく、安全教育の材料にもなります。
【病院・医療施設】
マスクを着用していない来院者や、不審な行動の確認といった用途が挙げられています。
また、インシデントが発生した際に該当する時間帯の映像をすぐ見つけられるかどうかは、医療施設では特に重要です。この点については、別の記事でも触れています。
【商業施設・店舗】
迷子の捜索が代表的な用途です。保護者から服装を聞き取り、その特徴で検索できれば、館内放送と並行して映像から探せます。
店舗では、レジ周辺のトラブルや、商品の紛失が発覚したときの確認にも使われます。店舗の防犯カメラについては、別の記事で整理しています。
【駐車場】
特定の車両がいつ入場し、いつ出たかを追う場面です。当て逃げや車上ねらいの申し出があった際、被害に遭った車両の周辺に、どの車がどの時間帯にいたかを確認することになります。駐車場の防犯カメラについては、別の記事で整理しています。
・駐車場・コインパーキングの防犯カメラ、よくある課題とその解決策
【オフィス】
立入禁止としている区域への進入や、駐車禁止区域に停まっている車両の確認といった用途が挙げられています。
■ 導入にあたっての条件
ここが実務上、最も重要な部分です。
【カメラと録画装置の両方が対応している必要があります】
AcuSearchを利用する場合、原則としてカメラと録画装置の両方が機能に対応している必要があるとされています。
つまり、レコーダーだけを買い替えても使えるとは限りません。既存のカメラが対応していなければ、カメラ側の更新も検討することになります。
【機種によっては、録画装置側だけで有効にできます】
ただし例外があります。DeepinMind NVRの一部の機種では、レコーダー側のエンジンを利用して機能を有効にすることも可能とされています。この場合、カメラを入れ替えずに済む可能性があります。ただし対応する機種が限られるため、現在お使いの機器の型番を確認したうえでの判断になります。
【できることと、できないことを先に確認する】
新しい機能を検討する際、最も避けたいのは「導入したが期待した使い方ができない」という状態です。
現在の構成で何が使えるのか、何を入れ替えれば何が使えるようになるのか。これは機器の組み合わせによって変わるため、既存の構成を確認したうえで個別に判断する必要があります。
■ 既存のアナログ環境をどうするか
ここまでの内容は、ネットワークカメラ(IPカメラ)を前提とした話です。
一方で、アナログの同軸ケーブルによるシステムを使い続けている施設も少なくありません。設置から年数が経っていても、映像が問題なく録れている限り、更新の動機は生まれにくいためです。
【IPへの全面移行が必須とは限りません】
こうした環境に対して、HIKVISIONは2026年6月より、既存のアナログ同軸ケーブルをそのまま活かせる次世代の同軸レコーダー「PowerX 2.0シリーズ」の国内展開を順次開始しています。
このシリーズには、AcuSearchがフルチャネルで搭載されています。再生画面から気になる人物や車両をクリックするだけで、全ての録画チャネルから類似する対象の過去の動きを抽出できます。つまり、高価なIPシステムへ全面的に移行しなくても、映像を探す機能を利用できるということです。
【配線を引き直さずに済むという意味】
既存の同軸ケーブルを流用できることは、費用面で大きな差になります。
カメラを設置する工事において、費用の相当部分を占めるのは配線です。建物の構造によっては、天井裏や壁の中を通す作業が必要になり、営業を止めて工事する必要が出ることもあります。既存の配線をそのまま使えるのであれば、この部分が不要になります。
【スマート検索という機能もあります】
PowerX 2.0シリーズには、画面上に指定した境界線を人や車両が横切ったイベントだけを抽出する「スマート検索」も搭載されています。風の揺れや小動物による誤報を排除し、異常が発生した瞬間だけをリスト表示する機能です。先に挙げた「動体検知の記録が膨大になる」という課題に直接対応するものです。
■ もう一つの課題、録画容量とHDDの価格
映像を探せるようにする話とは別に、録画容量という課題があります。
【高解像度化が容量を押し上げています】
監視カメラシステムの高解像度化が進んでいます。3K、5MP、4Kといった解像度が一般的になるにつれ、長期間の映像保存に必要なHDD(ハードディスクドライブ)の容量も増えています。録画期間を延ばしたい、画質を上げたい。どちらの要望も、必要な容量を押し上げます。
【HDDの価格が高騰しています】
そこに、市場環境の変化が重なっています。HIKVISIONは、世界的な原材料費の上昇や部品供給の不安定化にともない、HDD全体の市場価格が急激に高騰していると指摘しています。これがセキュリティ維持コストの増加に直結し、多くの企業や施設運営者の財務を圧迫する課題になっているなど。
つまり、これまでと同じ構成で更新しようとすると、以前より費用がかかる状況にあります。
【従来の圧縮技術には弱点がありました】
容量を抑える方法として、これまでもH.265+のような独自の高圧縮技術が使われてきました。
ただし、この方式には弱点がありました。HIKVISIONの説明によれば、静止シーンの圧縮には優れているものの、動体検知時の画質劣化と、専用のプレイヤー以外では再生できないという互換性の問題を抱えていたとされています。
後者は実務上、無視できない問題です。警察へ映像を提出する場面や、他社のシステムと連携する場面で、専用のソフトがなければ再生できないという状況が起こり得ます。
■ Guanlan AIエンコーディングという解決策
先に挙げたPowerX 2.0シリーズには、この課題に対応する圧縮技術が搭載されています。
【重要な対象と、背景を区別して圧縮する】
一般的な圧縮技術とは異なり、同一のフレーム内でAIが自動的に「重要な対象」と「重要度の低い背景」を識別する方式です。
人や車のナンバープレートといった、決定的な証拠となる部分は画質を落とさずに保護します。一方、動きのない時間帯については、フレーム間の重複部分をAIが判定し、静止画の状態で最大90%圧縮することでストレージの消費を抑えます。
証拠として必要な部分の画質は維持しながら、それ以外を圧縮する、という考え方です。
【H.265の標準規格に準拠しています】
この技術はH.265の標準仕様に従ってエンコードされるため、サードパーティ製の防犯プラットフォームや、WindowsやMacの汎用プレイヤーでそのまま再生できます。
先に挙げた「専用プレイヤーがなければ再生できない」という障壁が解消されています。映像を外部に提出する場面や、他社のシステムと連携する場面での制約がなくなる、ということです。
【公表されている検証データ】
HIKVISIONは、実際の混雑環境における24時間録画のデータ量を比較した検証結果を公表しています。
中程度の混雑環境(1080P/15fps、24時間録画)では、H.265が13.71GBであるのに対し、Guanlan AIエンコーディングでは7.6GBとなり、48.87%の削減が示されています。H.265+の9.51GBと比較した場合は、20%の削減です。高い混雑環境(4MP/15fps、24時間録画)では、H.265の25.71GBに対して18.14GBで、29.21%の削減とされています。
いずれも特定の条件下での検証結果であり、実際の削減率は撮影する環境や被写体の動きによって変動します。ただし、条件が明記されたうえで公表されている数値であるため、検討の目安にはなります。
【提供時期について】
PowerX 2.0シリーズは2026年6月より国内で順次提供が開始されています。3K/5MPモデルと2MPモデルがあり、いずれもGuanlan AIエンコーディングに標準対応し、AcuSearchはフルチャネル対応です。
双方向音声や、同軸ケーブルを用いた音声伝送にもフルチャネルで対応しています。なお、PoC(同軸ケーブルによる給電)に対応した機種は2026年第4四半期のリリース予定とされています。
■ 導入を検討する際の考え方
最後に、検討の順序について整理します。
【まず「何を探したいか」を決める】
機能から入ると、判断を誤ります。自社で実際に起きているのは、どういう場面か。誰かを追跡したいのか、物がなくなった時間を特定したいのか、特定の条件に当てはまる人を探したいのか。ここが決まらないと、どの機能が必要かも決まりません。
過去1年で、映像を確認した場面を思い出してみると、傾向が見えることがあります。
【次に、現在の構成を確認する】
カメラと録画装置の型番、設置年、配線の種類。これらによって、何ができて何ができないかが変わります。
アナログの同軸配線であれば、それを活かす選択肢があります。IPカメラであれば、対応機種かどうかで判断が分かれます。
【録画期間と容量は、後から決まる】
何日前まで遡って確認する必要があるか。これは業務上の要件であり、機器の性能から決まるものではありません。
必要な期間を先に決め、そこから容量を逆算する。圧縮技術によって同じ容量でより長く残せるのであれば、その分を期間に充てるか、画質に充てるかを選ぶことになります。
【現地を見ないと確定しない部分があります】
既存の配線がどこをどう通っているか、流用できる状態か、電源をどこから取っているか。これらは図面だけでは判断がつきません。
■ おわりに
防犯カメラの導入では、台数と設置位置が議論の中心になりがちです。しかし実際に運用が始まると、課題は別のところに現れます。映像は残っているのに、必要な場面を見つけられない。録画期間を延ばしたいが、容量が足りない。機器を更新したいが、配線からやり直すと費用が読めない。これらは、いずれも「導入したあと」に出てくる課題です。そして、後から解決できるものでもあります。
株式会社ジェイセキュリティでは、HIKVISIONの正規販売代理店として、機器のご提案から設置工事、既存設備からの更新までワンストップで対応しております。現在お使いの構成を確認したうえで、何ができるかをご提案いたします。録画映像の検索や、ストレージの見直しについてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
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※記載の内容は一般的な整理です。実際に必要な構成は、施設の規模、業態、既存設備の有無などにより異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※搭載されている機能は機種により異なります。対応可否については個別にご確認ください。
※AcuSearchの利用にあたっては、原則としてカメラと録画装置の両方が機能に対応している必要があります。機種によって条件が異なるため、既存の構成をご確認のうえ個別にご相談ください。
※AIによる検索および検知の精度は、設置環境、照明条件、被写体の状態などにより変動します。人による確認を代替するものではありません。
※記載の圧縮率および録画データ量は、メーカーが公表する特定の条件下での検証値です。実際の数値は撮影環境、被写体の動き、設定により変動します。
※製品の提供時期およびラインナップは変更される場合があります。最新の情報は個別にご確認ください。
※既存配線を流用できるかどうかは、配線の種類や状態、既存機器の仕様により異なります。現地確認が必要です。
※録画期間および必要な保存容量は、台数、画素数、録画設定により変動します。

