INFO IPカメラはLANケーブル1本で足りるのか|PoEと録画機の考え方
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IPカメラの導入を検討されているお客様から「LANケーブル1本を引けば済むと聞いた」というお話をいただくことがあります。
おおむね、そのとおりです。映像も電源も1本のケーブルでまかなえるため、カメラの設置場所ごとにコンセントを用意する必要がありません。屋外の壁面、天井裏、ポールの上。電源を新たに引くと工事が大きくなる場所ほどこの方式は効いてきます。
ただし、前提があります。すべてのIPカメラがLANケーブル1本だけで動作するわけではありません。カメラ側がLANケーブル経由での受電に対応しており、接続する録画機やスイッチの側にも必要な給電の能力があることが条件になります。
送れる電力には上限があり、カメラによって必要な電力も違います。そして録画機側にも接続できる台数とは別に供給できる電力の総量という制約があります。台数が少ないうちはこれらが問題になることはあまりありません。増設を重ねたり、動きのあるカメラを混ぜたりしたときにはじめて表に出てきます。
この記事ではLANケーブル1本で成立する条件と確認しておくべき点を整理します。
■ LANケーブル1本で何が送られているか
まず、何が同時に流れているかを確認します。1本のLANケーブルで扱われているのはカメラの映像データを含むネットワークの通信とカメラを動かすための電力です。設定や制御のやりとりも同じケーブルを通ります。
このネットワークのケーブルで電力を送る仕組みをPoEと呼びます。Power over Ethernet の略です。電力を送り出す側の機器を「給電側」、それを受けて動く機器を「受電側」と区別します。防犯カメラの構成では録画機やスイッチが給電側、カメラが受電側にあたります。
【つないだだけでは、電気は流れません】
IEEEの規格に準拠したPoEでは給電側の機器はケーブルの先につながった機器が受電に対応しているかを確認したうえで、給電を開始します。この手順があるため規格に準拠した機器どうしであれば、PoEに対応していない機器が混在していても扱えるようになっています。
ただし、これは規格に準拠した方式での話です。規格によらない独自の給電方式を採る製品もあり、その場合の挙動は製品により異なります。給電側と受電側の双方が規格に準拠しているかは確認しておく必要があります。
有線と無線の選択、配線経路の考え方については、別の記事で整理しています。
■ 給電には区分があります
PoEは電力の大きさによって区分が分かれています。規格を定めているのはIEEEという標準化団体で防犯カメラで使われるのは主に次の区分です。
【Type 1|IEEE 802.3af】
最初に定められた区分です。比較的消費電力の小さい機器を想定しています。
【Type 2|IEEE 802.3at】
Type 1より大きな電力を送れます。首振りやズームを行うカメラ、補助光を備えたカメラなど動作に電力を要する機器が対象になります。
【Type 3・Type 4|IEEE 802.3bt】
さらに大きな電力を扱う区分です。ケーブル内の4対すべてを使って電力を送ります。防犯カメラの範囲を超える用途も含まれます。仕様表にはType という表記ではなく、この規格名のほうが記載されていることがあります。どちらも同じものを指しています。
【下位の区分とも組み合わせられます】
区分が違う機器を混ぜられないわけではありません。上位の区分に対応した給電側の機器は下位の区分の受電側機器も扱えるように設計されています。そのため、給電側を選ぶときは接続する機器のうち最も電力を要するものに合わせておくのが基本になります。
■ 仕様表の数字は二つあります
ここが仕様表を読むときの分かれ目です。PoEの区分ごとの電力には給電側から送り出される値と受電側に届く値の二つがあります。この二つは一致しません。理由はケーブルの中で電力の一部が熱として失われるためです。送り出した分がそのまま届くわけではありません。
したがって、カメラが動作するかどうかを判断するときに見るべきなのは受電側に届く値のほうです。たとえば、給電側が送り出せる値だけを見て「余裕がある」と判断すると、実際に届く電力では足りないということが起こり得ます。仕様表に二つの数字が並んでいる場合、どちらが給電側でどちらが受電側かを確認してください。
【距離が延びるほど損失は増えます】
同じ理由からケーブルが長くなるほど、届く電力は小さくなります。ネットワークのケーブルにはそもそも配線できる距離に上限があります。それとは別に距離が延びることで電力の損失が増えるという性質があるということです。ただし、実際の損失は距離だけで決まるものではありません。ケーブルの品質、導体の太さ、接続する機器の消費電力によっても変わります。カメラの設置位置が給電側の機器から離れている場合は、この点の確認が必要になります。
■ カメラによって必要な電力は違います
すべてのカメラが同じ電力で動くわけではありません。
電力を多く必要とするのは次のような要素を備えた機種です。
・首振りやズームの機構を持つもの(駆動部があるため)
・補助光を備えたもの(点灯時に電力を要する)
・寒冷地向けにヒーターを内蔵したもの
・複数のレンズを備えたもの
一方、屋内の固定カメラのように機構を持たず消費電力の小さい機種もあります。
具体的な消費電力は機種により異なるため、導入前にカタログやデータシートで確認することになります。同じ形状のカメラでも、機能が違えば必要な電力は変わります。
【通常時ではなく最大時で考えます】
ここで注意が必要なのは消費電力が常に一定ではないという点です。赤外線照明を備えたカメラであれば、点灯する夜間と点灯していない日中とで消費電力が変わります。首振りの機構を持つカメラも動作している間とそうでない間では違います。ヒーターを内蔵した機種であれば、気温によって変わります。
つまり、通常時の値で計算すると夜になってからあるいは気温が下がってから電力が足りなくなるということが起こり得ます。給電側の容量を検討するときは仕様表に記載されている最大の消費電力を基準にするほうが安全です。
形状と機能の関係については、別の記事で整理しています。
・防犯カメラの形状の違い|ドーム・タレット・バレットの特徴と選び方
■ 録画機の給電には二つの上限があります
ここが実務で見落とされやすい点です。PoEに対応した録画機にはカメラを直接つなげるポートが備わっています。このとき制約になるのはポートの数だけではありません。
【1. ポートの数】
接続できる台数の上限です。これは仕様表に明記されているため、見落とされることは多くありません。
【2. 供給できる電力の総量】
こちらが見落とされます。メーカーの技術資料に具体的な説明があります。16のPoEポートを備えた録画機について、全体で供給できる電力の総量が決まっており、各ポートへはその範囲内で配分されるとされています。接続する機器の消費電力を事前に確認しておかないと、後から接続したカメラに電力が行き渡らず、接続が失われる場合があるという注意も示されています。
つまり、ポートが空いていても電力の総量に余裕がなければ増設できません。
【未使用分を配分できる場合があります】
同じ資料には対応する機種であれば、使っていないポートに割り当てられた電力を必要なポートへ再配分できるとも書かれています。全ポートを使わない構成であれば、この機能によって特定のカメラに多くの電力を回せる場合があります。ただし対応の可否は機種によります。
【帯域にも上限があります】
電力とは別に録画機が受け取れる映像のデータ量にも上限があります。メーカーの技術情報ではカメラを追加しようとしたときに解像度またはビットレートが上限に達したというエラーが出る場合があり、これは録画機がそのカメラの解像度に対応していない、あるいはそのカメラのビットレートによって録画機の受信帯域の上限を超えてしまうことを意味するとされています。
電力、帯域、ポート数。この三つは別々の上限です。増設を検討する際はそれぞれを確認することになります。
【不足したときの症状はそれぞれ違います】
どこが足りていないのかは、症状から見当がつきます。
・電力が足りない場合は、カメラが起動しない、または動作が安定しない
・ポートが足りない場合は、そもそも物理的に接続できない
・受信できるデータ量を超えている場合は、機器としては接続できるが、カメラを追加できない、あるいは設定を下げるよう求められる
症状が違うため、切り分けは可能です。
録画機と機器の組み合わせをどう確認するかについては、別の記事で整理しています。
・防犯カメラは他社製品とつなげられるか|ONVIF対応の読み方
■ 録画機に直結するかスイッチを挟むか
配線の構成には大きく二つの考え方があります。
【録画機のPoEポートに直接つなぐ】
カメラを録画機のポートへ1台ずつ接続する形です。機器が少なく済み、構成も分かりやすくなります。台数が録画機のポート数に収まり、電力の総量にも余裕がある場合はこの構成で足ります。
【途中にスイッチを挟む】
カメラをいったんスイッチに集約し、そこから録画機へ1本で接続する形です。この構成が向くのは、次のような場合です。
・カメラの台数が録画機のポート数を超える
・電力の総量が足りない
・カメラが離れた場所に分散しており、録画機まで1本ずつ引くと配線が長くなる
・後から増設する可能性がある
配線の総本数を減らせる点は既存の記事でも触れています。フロアごとにカメラを設置するような場合、各フロアに集約する機器を置くことで、建物を横断する配線を減らせます。
・アナログカメラとIPカメラの違い|今ある設備はどちらかから考える
【スイッチにも同じ上限があります】
なお、スイッチを挟む場合も電力の総量という制約は同じです。ポート数と供給できる電力の合計の両方を確認することになります。
【集約した先の回線も確認します】
もう一点、スイッチを挟む構成に固有の注意があります。カメラをスイッチに集約すると、そこから録画機へ向かう1本の回線に接続した全台分の映像データがまとめて流れます。カメラ1台あたりのデータ量に問題がなくても、台数が増えれば合計は大きくなります。スイッチと録画機をつなぐ回線の帯域も確認の対象になります。
■ 既存が同軸ケーブルの場合
ここまではLANケーブルを前提とした話です。既にアナログのカメラを使用していて、同軸ケーブルが敷設されている場合、選択肢は二つあります。
【同軸を活かす】
同軸ケーブルをそのまま使いながら機器を更新する方法があります。配線をやり直さずに済むため、費用の面では有利です。
【LANケーブルへ切り替える】
IPカメラの構成に移行する場合、配線の引き直しが必要になります。ただし、同軸ケーブルを使ってネットワークの信号を伝送する変換の仕組みもあり、建物の構造によってはこれが検討されることもあります。
どちらが適しているかは、既存配線の状態、必要な機能、台数によって変わります。入れ替えの判断については別の記事で整理しています。
・防犯カメラの入れ替えを検討するとき|既存配線を活かす方法と判断のポイント
■ LANケーブル1本で足りるか、確認する順序
ここまでの内容を確認の順に並べます。上から順に見ていけば、自社の構成で成立するかの見当がつきます。
【1. カメラが受電に対応しているか】
LANケーブル経由での受電に対応した機種かどうか。ここが出発点になります。
【2. 給電側が対応しているか】
録画機のPoEポート、またはPoEに対応したスイッチ。どちらから給電するかを決めます。
【3. 規格と最大消費電力が合っているか】
接続するカメラのうち、最も電力を要するものに対応した区分かどうか。通常時ではなく、最大時の値で確認します。
【4. 全台分の合計が供給できる電力の範囲に収まるか】
ポート数ではなく、電力の合計です。赤外線照明が点灯する時間帯や、気温が下がる時期も想定に入れます。将来の増設分の余裕も見ておきます。
【5. ポートの数は足りるか】
台数分のポートがあるか。足りなければ、スイッチを挟む構成になります。
【6. 配線距離に問題はないか】
ケーブルを通せるか。距離は足りるか。給電側の機器を、カメラに近い位置へ置けないか。
【7. データ量が録画機の範囲に収まるか】
録画機が受け取れるデータ量と、保存したい日数。スイッチを挟む場合は、そこから録画機へ向かう回線も含めて確認します。保存期間の考え方については、別の記事で整理しています。
■ おわりに
LANケーブル1本でカメラを設置する構成は成立します。規格が整備されており、区分ごとに送れる電力も公開されています。対応した機器を組み合わせれば、カメラの設置場所に電源を用意する必要はありません。
導入すると変わるのは設置場所の選択肢です。
これまで電源が取れないという理由で諦めていた位置にカメラを置ける場合があります。屋外の壁面、駐車場のポール、天井裏の奥。カメラの設置場所ごとにコンセントを用意しなくてよくなれば、その分だけ選べる位置が広がります。台数が増えるほど、この差は大きくなります。
なお、給電側の機器そのものには電源が必要です。録画機やスイッチを置く場所にはコンセントを確保することになります。もちろん、条件はあります。ポートが空いていても電力の総量が足りないことがありますし、距離や機種によっても変わります。ただしこれらは事前に確認しておけば済む話です。導入してから判明して困るという性質のものではありません。
難しいのは確認すること自体ではなく、自社の設置条件でどの構成が成り立つかを見極めることです。台数、位置、必要な機能。この三つが決まれば、録画機に直結するのか、スイッチを挟むのか、電源工事が必要になるのかは判断できます。
株式会社ジェイセキュリティでは、防犯カメラの機器選定から設置工事まで、導入環境に合わせたご提案を行っています。
「LANケーブル1本で接続できるのか」「PoEスイッチを使ったほうがよいのか」「既存の配線や設備を活かせるのか」など、設置する台数や場所、カメラの機能によって必要な構成は変わります。
新しく防犯カメラを導入する場合はもちろん、既存のカメラを入れ替える場合や増設する場合も、現在の設備や設置環境を確認したうえで、適した構成をご提案します。
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※記載の内容は一般的な整理です。実際に必要な構成は、設置場所の環境、既存設備の有無、必要な台数および機能により異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※搭載されている機能、対応する給電の区分、必要な電力は機種により異なります。対応可否については個別にご確認ください。
※供給できる電力の総量、接続できる台数、受信できるデータ量は、機器の仕様により異なります。導入前に個別にご確認ください。
※配線可能な距離および電力の損失は、ケーブルの種類、敷設距離、使用する機器により異なります。現地確認が必要です。
※既存配線の流用可否は、ケーブルの種類・状態・敷設距離・使用する機器により異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※規格に準拠しない独自の給電方式を採る製品もあります。給電側と受電側の対応方式については、導入前に個別にご確認ください。
※規格の内容は改定により変わる可能性があります。最新の情報は規格団体が公表する資料でご確認ください。

