INFO 防犯カメラの映像を求められたら|対応の判断と手順
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防犯カメラを運用していると外部から映像に関する連絡が入ることがあります。警察から「事件の捜査で映像を確認したい」と言われた。映っていた人から「自分が映っている映像を見せてほしい」と求められた。あるいはレコーダーが不正アクセスを受けたかもしれないという事態が起きた。いずれも、その場で判断を迫られます。そして多くの場合、対応するのは現場の担当者です。
この記事ではこの三つの場面について、事前に決めておくべきことを整理します。なお、カメラの設置にあたっての利用目的の特定、掲示、保存期間の考え方、安全管理措置といった基本的な事項については、別の記事で整理しています。
・防犯カメラと個人情報保護法|設置前に押さえる基本と顔認証カメラの注意点
■ 警察から映像を求められたとき
防犯カメラの映像について外部から連絡を受ける場面の一つが警察からの照会です。
【本人の同意は必要ありません】
個人情報保護法は、本人の同意なく個人データを第三者に提供することを原則として禁じています。ただし、例外が定められています。個人情報保護委員会は、次のように示しています。
警察や検察等の捜査機関からの照会(刑事訴訟法第197条第2項)や、検察官及び裁判官等からの裁判の執行に関する照会(同法第507条)に対する回答は「法令に基づく場合」(法第27条第1項第1号)に該当するため、これらの照会に応じて個人情報を提供する際に本人の同意を得る必要はありません。要配慮個人情報を提供する際も同様です。この場合、映っている本人の同意を得る必要はありません。なお、これは「警察からの照会であれば、どのような映像でも自由に提供できる」という意味ではありません。
【本人への連絡は、慎重に判断します】
「念のため映っている人に確認してから」という対応が、適切とは限らない場合があります。捜査の性質によっては、捜査対象者に捜査の存在を知らせることにつながる可能性があるためです。判断に迷う場合は、照会してきた警察に確認するのが確実です。
【提供する範囲を確認します】
同意が不要だからといって、求められるまま何でも渡してよいというわけではありません。照会の内容としてどの日時の、どのカメラの映像が必要とされているか。ここを確認したうえで対応することになります。範囲が明確でない場合は警察に確認するのが確実です。
■ 照会には二つの性質があります
警察からの依頼には、任意のものと、強制力を伴うものがあります。この区別を知っているかどうかで、対応が変わります。
【捜査関係事項照会は任意の協力を求めるものです】
捜査関係事項照会書は、刑事訴訟法第197条第2項に基づくものです。同項は「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と定めています。この照会について、警察庁の通達には次の記述があります。
照会を受けた公務所又は公私の団体は、報告すべき義務を負うものと解されているが、この義務の履行を強制する方法はないことに留意する
捜査関係事項照会は令状による差押えとは性質が異なります。ただし、警察庁の通達では照会を受けた側には報告すべき義務があると解される一方、その履行を強制する方法はないとされています。したがって、「任意だから応じなくてもよい」と単純に考えるのではなく、照会の内容を確認したうえで適切に対応することが重要です。
捜査は公益性の高い活動であり、協力することが一般的です。ただし、照会の内容や範囲について確認や相談ができないわけではないという前提は知っておくとよいと思います。
【令状には強制力があります】
一方、裁判官が発付した差押許可状などの令状が提示された場合は、性質が異なります。こちらは強制力を伴うため、照会とは異なる対応が必要です。令状の内容を確認し、現場担当者だけで判断せず、社内の責任者や必要に応じて専門家に確認しながら対応します。
【どちらなのかを、まず確認します】
提示された書面が、捜査関係事項照会書なのか、令状なのか。ここを確認することが出発点になります。
■ 電話での依頼にどう対応するか
実務で判断に迷うのは書面が示されない場合です。
【照会は書面で行われるのが一般的です】
刑事訴訟法には明文の定めがありませんが、捜査関係事項照会は、捜査を管轄する所属長の名義で、書面によって行われるのが通例です。警察庁の通達でも、司法警察職員捜査書類基本書式例に規定されている捜査関係事項照会書等を発出するなどして、公信性の確保に努めることとされています。
【電話では、確認できないことがあります】
電話での問い合わせでは、相手の身分を確認できません。所属長の意思が示されたものかどうかも分かりません。急いでいる様子で「すぐに見せてほしい」と言われることもあります。しかし、その電話が本当に警察からのものかを確認する手段がない状態で映像を渡せばまったく別の問題が生じます。
【確認すべきことを決めておきます】
映像を提供する前に、正式な照会であることを確認することが重要です。捜査関係事項照会は書面で行われるのが通例とされているため、電話だけで判断せず必要に応じて正式な書面の提示を依頼します。そのうえで緊急性が高い場合には少なくとも次を確認します。
・所属(警察署名、課名)
・担当者の氏名と連絡先
・照会の根拠(捜査関係事項照会か、令状か)
・必要としている映像の範囲(日時、場所)
折り返しの連絡をこちらから警察署の代表番号にかけ直すという方法もあります。
■ 提供した記録を残す
映像を提供したらその事実を記録に残しておくことをおすすめします。
【何を残すか】
いつ、どこに、どの範囲の映像を、どのような根拠で提供したか。照会書の写しを保管しておけば、根拠の記録になります。照会書を返却する必要がある場合は番号と日付の控えを残しておく方法もあります。
【なぜ必要か】
提供の判断が適切だったかを後から説明できるようにするためです。また、社内で対応が引き継がれる場合にも過去にどう対応したかが分かることは有用です。担当者が変わるたびに判断がぶれる状態を防げます。
■ 本人から「見せてほしい」と言われたとき
警察からの照会とはまったく別の話です。混同すると対応を誤ります。
【まず、開示義務があるかを確認します】
個人情報保護法は本人からの請求に応じて保有個人データを開示することを求めています。ただし、対象は保有個人データです。
防犯カメラの映像が保有個人データに該当するかどうかはシステムの構成によって判断が分かれます。この点については別の記事で整理しています。つまり、「自分が映っているから見せてほしい」と言われても、法律上の開示義務が直ちに生じるとは限りません。また、開示する場合でも、請求者以外の人物が映り込んでいる場合にはその人の権利利益への配慮が必要です。
【開示しないことができる場合が定められています】
保有個人データに該当する場合でも、開示しないことができる場合が法律に定められています。
・本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
・当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
・他の法令に違反することとなる場合
【映り込みへの配慮が必要です】
防犯カメラの映像には、請求してきた本人以外の人も映っています。他の来訪者、他の従業員、通行人。こうした方法では、請求者以外の人物の映像まで相手に渡ってしまう可能性があるため、安易に行わないことが重要です。他の人が映り込んでいればその人たちの権利利益に関わります。
【断る場合も、説明は必要です】
開示しないと判断した場合でも、その旨を伝えることになります。何も答えないという対応は、事態を大きくします。代わりに何ができるかを示せる場合もあります。たとえば、当事者間のトラブルであれば、警察に相談したうえで捜査の一環として照会を受ける形であれば対応できる、といった説明です。
【担当者によって対応が変わらないようにします】
この場面で最も避けたいのは対応にばらつきが出ることです。ある人には見せて、別の人には断る。後から問題になります。
■ 映像が漏れたとき
起きてほしくない事態ですが、備えは必要です。
【令和4年4月から報告と通知が義務化されています】
個人情報保護委員会は、次のように案内しています。令和4年4月1日から個人データの漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれがあるときは個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が必要となります。
報告対象となる事態が発生した場合、速報については事態を知った日から一定期間内に報告する必要があり、確報についても期限が定められています。具体的な期限は事態の種類によって異なるため、発生時には個人情報保護委員会の最新の案内を確認する必要があります。
【対象となる事態が定められています】
報告が必要となるのは、次のような場合です。
・要配慮個人情報が含まれる漏えい等
・財産的被害が生じるおそれがある漏えい等
・不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい等
・1,000人を超える個人データの漏えい等
【カメラで関係するのは三つ目です】
カメラやレコーダーが不正アクセスを受けた場合や、記録媒体が盗難に遭った場合などは、事態の内容によって報告対象に該当する可能性があります。ネットワークカメラを外部からアクセスできる状態で運用している場合、この可能性はゼロではありません。
【該当しない場合でも、対応は必要です】
報告義務の対象は個人データです。防犯カメラの映像がこれに該当するかは、前述のとおりシステムの構成によります。ただし、義務の対象かどうかと、対応すべきかどうかは別の話です。映像が外部に流出したという事態そのものは重大であり、原因の調査と再発防止は必要になります。
【疑われた時点で動けるようにしておきます】
報告対象となる類型には漏えい等が発生した「おそれ」がある場合も含まれます。確定してから動くのでは、期限に間に合いません。不審なアクセスログを見つけた、機器が紛失した。こうした時点で誰に連絡するかを、決めておく必要があります。
■ 決めておくこと
三つの場面に共通するのは事前の準備です。
【1. 誰が判断するか】
現場の担当者がその場で判断する状況は避けるべきです。警察から連絡が来たとき、本人から求められたとき、それぞれ誰に連絡し、誰が可否を決めるのか。
【2. 何を確認するか】
警察からの依頼であれば、書面か口頭か、照会か令状か、範囲はどこまでか。本人からの請求であれば、何を根拠に、どの範囲を求めているか。
【3. どう記録するか】
提供した場合、断った場合、いずれも記録を残します。判断の根拠が分かる形にしておきます。
【4. 誰が映像にアクセスできるか】
そもそも、映像を取り出せる人が限定されていなければ、判断の手順を決めても意味がありません。閲覧権限は、録画機側の設定のほか、遠隔監視用のアプリや管理ソフトウェアでも設定できます。製品によっては、誰がいつ映像を閲覧・操作したかを確認できる操作ログを備えているものもあります。現在どうなっているかを確認しておくことをおすすめします。
【5. 連絡の順序】
漏えいが疑われる事態では、時間の制約があります。誰が最初に連絡を受け、どこに報告するのか。あらかじめ決めておく必要があります。
■ おわりに
映像を求められる場面はいつ来るか分かりません。しかし、来たときにどう対応するかは事前に決めておくことができます。警察からの照会には応じるのが一般的であること。ただし任意の照会と令状では性質が違うこと。本人からの請求は別の枠組みで判断すること。そして、いずれの場合も記録を残すこと。
これらを整理しておけばその場で慌てる必要はなくなります。担当者が誰であっても同じ基準で対応できます。決めていない状態で求められると、判断がその場限りになります。後から検証もできません。準備しておくかどうかの差はそこに出ます。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。
※記載の内容は一般的な整理です。個別の事案における法令の適用および対応の可否については、弁護士等の専門家にご確認ください。
※法令およびガイドラインの内容は改正により変わる可能性があります。最新の情報は個人情報保護委員会の公表資料でご確認ください。
※個人情報保護法上の「個人データ」「保有個人データ」に該当するかは、システムの構成および運用の実態により判断が異なります。自社の構成については個別にご確認ください。
※搭載されている機能は機種により異なります。閲覧権限の設定や操作記録の取得の可否については個別にご確認ください。

