INFO セルフレジと防犯カメラ|レジ前で何が起きているか
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人手不足への対応として、セルフレジの導入が進んでいます。レジに人を張り付けなくて済む。会計待ちの列が短くなる。限られた人員を売場に回せる。導入の目的はおおむねこうしたところにあります。
ただ、ひとつ変わったことがあります。会計を行う人が変わりました。有人のレジでは店員がお客様と向かい合い、商品を一点ずつ扱います。セルフレジではその工程の多くをお客様自身が行います。店員が一件ずつ商品を確認する会計から利用者自身が操作する会計へと変わりました。
この記事では業界団体の調査をもとに、セルフレジ導入後に何が起きているのかを整理し、記録という観点から何ができるのかをまとめます。
■ 調査が示していること
特定非営利活動法人 全国万引犯罪防止機構が全国の小売業を対象に実態調査を行っています。警察庁と日本小売業協会の協力のもと、小売業の各業界団体から推薦を受けた企業に調査票を送る形で実施されているものです。
第14回の調査は1,069社に調査票を送付し、265社から回答を得たものです。回収率は24.9%とされています。なお、回答企業の業態構成や回答状況もあるため、この結果を全国の小売店すべての実態としてそのまま捉えるものではありません。以下の数字はこの調査に回答した企業における傾向として扱います。
【セルフレジの導入状況】
回答企業のうち、セルフレジを導入しているのが19.6%、セミセルフレジが20.4%、両方を導入しているのが12.8%。いずれも未導入は45.7%でした。業態による差が大きくスーパーでは未導入が14.1%にとどまる一方、百貨店では97.3%が未導入となっています。
【導入後、万引被害はどうなったか】
ここが、この調査で最も注目すべき部分です。セルフレジ導入による万引被害の増減について、「増えた」が25.0%、「変わらない」が29.3%、「わからない」が41.4%。そして「減った」は0.0%でした。
業態別では書籍・文具で「増えた」が45.0%と高くなっています。
【マイバッグについても、同様の回答傾向】
レジ袋の有料化によるマイバッグ利用の増加に伴う万引被害についても同じ形式の設問があります。「増えた」が27.2%、「変わらない」が31.7%、「わからない」が38.9%、そして「減った」は0.0%。
両方の設問で「減った」と回答した企業は0.0%でした。
ただし、これはセルフレジやマイバッグの利用が万引被害を増加させるという因果関係を示すものではありません。この調査では、導入や利用の増加のあとで被害が「減った」と回答した企業がなかったという結果です。
■ 「わからない」が4割という問題
上の数字でもう一つ見ておきたいのが「わからない」の多さです。セルフレジで41.4%、マイバッグで38.9%。被害が増えたのか、変わらないのかを回答できない企業が4割を超えています。これは被害が出ていないという意味ではありません。少なくとも、自社の状況を数字として把握できていない企業が一定数あることが分かります。
調査の自由記述にも全数の把握ができていない、本部で把握できるのは一部の連絡に限られるといった回答が寄せられています。
【気づかない損失を、不明ロスと呼びます】
在庫を確認したとき、帳簿上の数量と実際の数量が合わない。原因を特定できないまま発生しているこうした損失を不明ロスと呼びます。
同じ調査で年間の総売上に対する不明ロス金額の構成比は有効回答77社の平均で0.71%とされています。業態別では書籍・文具が2.08%と高くなっています。売上に対する比率としては小さく見えますが、金額に直すと相当な規模になります。
■ 不明ロスは万引きだけではありません
不明ロスの原因別の推定割合について調査は次の数字を示しています。万引窃盗が41.4%、管理誤りが38.0%、その他が17.2%、従業員窃盗が2.7%、業者不正が0.7%。
【管理誤りが4割近くを占めています】
注目したいのは管理誤りです。発注や検品の記録の誤り、値引きや廃棄の処理漏れ、レジでの登録ミス。これらは犯罪ではありません。しかし結果として在庫が合わなくなります。セルフレジではお客様自身が商品登録を行うため、意図的な未スキャンだけでなく、操作のミスや登録漏れが発生する可能性があります。
実際に調査の自由記述にはセルフレジでの未精算や未スキャンが増加している、アテンダントを配置していても未精算の件数が多く発生しているといった回答があります。
つまり、レジ前で起きていることには意図的なものとそうでないものが混在しています。そして映像などの記録がなければ、後から状況を確認すること自体が難しくなります。
■ 声をかけにくいという課題
調査の自由記述には現場の困りごとが具体的に書かれています。袋が不要で商品だけを持って店外に出る場合、精算済みかどうかが分かりにくく声をかけづらい。未精算のものをマイバッグに入れられると精算済みのものと区別がつかない。誤認のリスクが高く、店舗では抑止に留まっている。
【誤認は別のリスクを生みます】
精算していないお客様に声をかける。この判断を誤るとお客様との関係を損ないます。同じ調査に万引窃盗対策を強化すると疑われているようで不快だとクレームが増える、バランスが難しいという回答もあります。つまり現場は、見逃すリスクと誤って声をかけるリスクの両方に挟まれています。判断の根拠がないまま、どちらかを選ばされている状態です。
■ 有人レジとはカメラの役割が違います
ここが従来の店舗防犯との分かれ目です。有人レジではレジ周辺のカメラは、店員とお客様のやり取りや金銭授受の状況を確認できるようにすることが主な目的の一つでした。カウンターを斜めから捉える位置と全体を俯瞰する位置を組み合わせ、顔と手元の両方が映る構図をつくる。店員とお客様のやり取りを記録する考え方です。
店舗全般の課題については別の記事で整理しています。
セルフレジではその構図が変わります。見るべきなのは、店員とお客様のやり取りではなく、お客様の手元の動きです。商品をスキャナーにかざす動作、袋詰め台へ移す動作。記録する場所が変わります。
■ カメラだけで完結する話ではありません
ここではっきりさせておきたい点があります。防犯カメラはレジで商品が登録されたかどうかを判定する機器ではありません。
どの商品が登録されたのか、点数はいくつだったのかという情報はレジ側のデータに残ります。一方、実際にどのような操作が行われたのかは映像に残ります。
【二つを照合する】
この二つを組み合わせると登録された内容と実際の動作の関係を後から確認しやすくなります。映像だけを見てもその商品が登録されたかどうかは分かりません。データだけを見てもそのとき何が起きていたかは分かりません。
防犯カメラに求めるのはすべてをカメラだけで判断することではありません。必要な情報を後から確認できる状態にしておくことです。
■ 調査に寄せられた実際の対策
第14回の調査ではこの3年間で効果が出た対策についても記述を求めています。セルフレジに関するものを挙げます。
【スキャナー周辺を撮影する構成】
セルフレジのスキャナー周辺を撮影する小型カメラとモニターを設置したという回答があります。会計の際に一部商品をスキャンせずに持ち去る不正への抑制効果があり、あわせて被害届を提出する際の資料としても有効だったという内容です。
【手元と登録内容をその場で見せる構成】
お客様の商品登録操作の手元映像とレジの登録点数をリアルタイムで表示するセカンドモニターを設置したという回答もあります。
いずれも、映し出されていること自体を相手に見せる構成です。記録するだけでなく、見られていることが伝わる形になっています。
【ただしこれらは各社の回答です】
念のため申し添えます。上記は調査に寄せられた回答であり、団体による効果の検証結果ではありません。同じ構成がどの店舗でも同じ効果をもたらすとは限りません。同じ調査の中には対策を講じたが効果は不明という回答も複数含まれています。
■ 人を置いてもなくなるわけではありません
セルフレジコーナーにアテンダントを配置しているという回答は調査の中に複数あります。一方でアテンダントを配置していても未精算の件数が多く発生しているため、従業員の配置位置や取り組み方を検討する必要があるという回答もあります。
少なくとも調査にはアテンダントを配置していても未精算が多く発生しているという回答があります。人を配置するだけですべての問題を解決できるとは限りません。そもそもセルフレジの目的は省人化なので、人を増やせば導入の意味が薄れます。
【記録は判断の材料になります】
カメラは未精算を止める機器ではありません。できるのは何が起きたかを後から確認するための材料を残すことです。その結果として、いくつかのことが変わります。どの時間帯にどの程度のことが起きているのかを確認できる。声をかけるかどうかの判断に根拠を持てる。被害届を出す際の資料になる。対策を打ったあとで状況が変わったかを確認できる。
先ほどの「わからない」という状態に対して、後から状況を確認するための材料を残せるようになります。
■ 導入前に確認すること
セルフレジ周辺の記録を検討する際、確認しておきたい点を挙げます。
【1. 何を記録したいのか】
手元の操作なのか、レジ前の全体の様子なのか、退店する動線なのか。目的によって、設置する位置と台数が変わります。
【2. 既存のカメラで見えているか】
すでに店内にカメラがある場合、セルフレジの手元まで映っているかを確認します。天井から俯瞰する構図では、手元の動きは分かりません。
【3. 映像を後から探せるか】
記録していても、必要な場面を見つけられなければ確認に時間がかかります。映像を探す仕組みについては、別の記事で整理しています。
・録画映像を「探せる」状態にする|AI検索とストレージコストの実務
【4. どれだけ遡れるか】
在庫の差異が判明するのは、棚卸しのタイミングであることが少なくありません。その時点から遡って確認できる日数が必要になります。保存期間の考え方については、別の記事で整理しています。
【5. 従業員への説明】
セルフレジ周辺のカメラは、お客様だけでなく、アテンダントとして配置される従業員も映ります。設置の目的をあらかじめ伝えておくことが、運用上は重要になります。
【6. 利用目的と掲示】
店舗内のカメラは、お客様と従業員の映像を記録します。何のために撮影し、どう利用するのかを整理し、必要に応じて店内への掲示など、撮影されていることを認識できるようにする対応もあわせて確認します。
■ おわりに
この調査ではセルフレジ導入後に万引被害が減ったと回答した企業は一社もありませんでした。ただ、それは導入をやめるべきだという話ではありません。人手不足は現実の課題でセルフレジはその解決策として機能しています。
必要なのはレジ前で何が起きているかを把握できる状態にすることです。把握できるようになると判断が変わります。被害が実際に増えているのかが分かる。意図的なものか操作のミスかを判断するための材料になる。声をかけるかどうかに根拠を持てる。対策を打ったあと、効果があったのかを確認できる。
もちろん、カメラが未精算そのものを止めるわけではありません。設置すれば解決するという性質のものでもありません。
難しいのは記録すること自体ではなく、自店にとって何を確認したいのかを決めることです。手元の操作なのか、全体の流れなのか。求めるものによって必要な構成は変わります。
株式会社ジェイセキュリティでは、防犯設備士が現地の状況をうかがったうえで、レジ周りの配置を踏まえた構成をご提案しております。セルフレジを導入済みの店舗では、既存のカメラが有人レジを前提とした位置のままになっていることがあります。いまの映像で手元が映っているかどうかをご確認いただき、映っていない場合は増設や移設で対応できる場合もあります。
「既存のカメラをどこまで活かせるか」という段階からでも構いません。お気軽にお問い合わせください。
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※記載の統計は、特定非営利活動法人 全国万引犯罪防止機構が実施した第14回の実態調査(2024年公表)に基づく参考値です。調査時点、回答企業の構成により数値は変動し、小売業全体の実態を示すものではありません。
※調査結果は、セルフレジやマイバッグの利用と万引被害との因果関係を検証したものではありません。
※調査の自由記述として紹介した内容は、回答企業による記述であり、団体による効果の検証結果ではありません。同様の効果を保証するものではありません。
※記載の課題と対応の考え方は一般的な整理です。実際に必要な構成は、店舗の規模、業態、レジの配置、既存設備の有無などにより異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※搭載されている機能は機種により異なります。対応可否については個別にご確認ください。
※映像の記録および利用にあたっては、設置目的の明示および適切な運用管理が必要です。

