INFO 防犯カメラの設置場所に電源がないとき|PoEとPoCの選び方
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防犯カメラを新しく設置するとき、カメラの設置場所に電源がないことがあります。屋外の壁面、ポールの上、敷地の奥。コンセントを引くには電源工事が必要になり、工事の範囲が広がります。このような場合、カメラの設置場所までケーブルを使って電力を送る方法があります。
代表的な方式として、LANケーブルを使うPoEと、同軸ケーブルを使うPoCがあります。どちらも、1本のケーブルで映像と電力を送るという点では同じです。ただし、対応できる距離は同じではありません。PoEは一般的に100mを基準として設計します。一方PoCは、機器やケーブルの条件によって対応距離が異なり、100mを超える距離に対応する製品もあります。そのため、設置場所までの距離だけでなく、使用するケーブルや機器の仕様を確認することが必要になります。
この記事では、二つの方式の違いと、確認しておきたい点を整理します。
■ 二つの方式
まず、それぞれの仕組みを確認します。
【PoE】
LANケーブル1本で、映像のデータと電力を送る方式です。IPカメラで使われます。給電する側は、PoEに対応した録画機、またはPoEスイッチです。LANケーブル1本をカメラまで引けば、映像の伝送と給電の両方ができます。
PoEについては、別の記事で詳しく整理しています。
・IPカメラはLANケーブル1本で足りるのか|PoEと録画機の考え方
【PoC】
同軸ケーブル1本で、映像信号と電力を送る方式です。アナログのカメラで使われます。給電する側は、PoCに対応した録画機、またはPoC用の電源ユニットです。ワンケーブル方式、電源重畳方式と呼ばれることもあります。
同軸ケーブルを使う方式そのものについては、別の記事で整理しています。
・同軸の防犯カメラ|CVBS・AHD・TVI・CVI・SDIの確認方法
【二つの方式の違い】
主な違いを整理します。
・対象となるカメラ:PoEはIPカメラ、PoCは対応するアナログカメラ
・使用するケーブル:PoEはLANケーブル、PoCは同軸ケーブル
・給電する機器:PoEはPoE対応録画機やPoEスイッチ、PoCはPoC対応録画機や専用の給電装置
・規格と互換性:PoEはIEEEの規格に基づく給電方式、PoCは製品ごとの対応確認が重要
・配線距離:PoEは標準的には100mを基準、PoCは機器とケーブルの条件による
・既存配線の活用:PoEは既設のLANケーブル、PoCは既設の同軸ケーブルを活用できる場合がある
なお、PoEとPoCの違いは給電方式のものです。実際の機器選定では、IPカメラとアナログカメラの機能の違いや、録画機との互換性も含めて判断することになります。
■ 規格の位置づけが違います
ここが、二つの方式の大きな違いです。
【PoEは規格が定められています】
PoEは、IEEEという標準化団体が規格を定めています。給電する側と受電する側に区分があり、それぞれの電力の値も公開されています。対応する規格や必要な電力などの条件が合えば、異なるメーカーの機器を組み合わせることもできます。
ただし、PoE対応と記載されていても、給電側の出力とカメラ側の消費電力が合わない場合は使用できません。機器を選ぶ際には、対応する規格と給電の能力を確認することになります。
なお、PoEで電力を供給できることと、IPカメラの映像を録画機で扱えることは、別の問題です。映像と録画機の互換性については、別の記事で整理しています。
・防犯カメラは他社製品とつなげられるか|ONVIF対応の読み方
【PoCは製品ごとの確認が必要です】
一方PoCは、PoEのような統一された規格とは異なり、メーカーや製品のシリーズによって給電の仕様や対応する機器が異なります。そのため、PoC対応と記載された機器どうしであっても、組み合わせて使用できるとは限りません。
たとえばHIKVISIONのPoC対応機器には、同社製の対応カメラを使用することが指定されている機種があります。取扱説明書には、それ以外のPoC給電対応機器には対応していないため、ACアダプタからの電源供給が必要になる旨の記載があります。
PoCを利用する場合は、カメラと給電側の機器が正式に対応しているかを、メーカーの仕様書や取扱説明書で確認する必要があります。
【給電できる電力にも上限があります】
PoEとPoCのどちらについても、給電側の機器が供給できる電力には上限があります。カメラの消費電力が給電の能力を超える場合、正常に動作しないことがあります。また、複数台のカメラに給電する場合は、各ポートの給電能力だけでなく、機器全体で供給できる電力の合計も確認の対象になります。
台数だけでなく、必要な電力を含めて構成を検討することになります。PoEにおける電力の考え方については、前述の記事で整理しています。
【何が変わるか】
この違いは、将来の判断に影響します。
機器を追加するとき、あるいは一部を入れ替えるとき。PoEであれば、規格に沿った機器から選べます。PoCの場合は、対応が確認できている機種を選ぶことになります。
どちらが良いという話ではありません。ただ、確認すべき範囲が異なるという点は、導入の時点で把握しておく必要があります。
■ PoCは給電の有無で対応距離が変わる場合があります
PoCについて、確認しておきたい性質があります。PoCでは、カメラの消費電力や同軸ケーブルの種類、給電側の機器によって、対応できる距離が異なります。メーカーの製品資料では、映像だけを伝送する場合と、PoCによる給電を行う場合とで、それぞれ異なる最大距離が示されているものがあります。
【設計の順序が変わります】
そのため、映像信号が届く距離であっても、PoC給電を伴う場合には、使用する機器とケーブルの組み合わせを確認する必要があります。
既存の配線を流用する場合は、そのケーブルの種類も確認の対象になります。なお、PoEについても配線距離の上限があります。性質は異なりますが、距離の確認が必要である点は同じです。
■ 給電の方法は、録画機だけではありません
PoCの構成には、選択肢があります。
【録画機から給電する】
PoCに対応した録画機を使う方法です。録画機に給電の機能が組み込まれており、同軸ケーブルを接続すればカメラに電力が供給されます。機器の数が少なく、構成はシンプルになります。
【電源ユニットを別に置く】
もう一つ、PoC用の電源ユニットを録画機とは別に設置する方法があります。カメラと録画機の間にユニットを挟み、そこから給電する構成です。メーカーの資料では、4チャンネルや8チャンネルのユニットが確認できます。
この構成であれば、録画機そのものがPoCに対応していなくても、給電を追加できる場合があります。既存の録画機を活かしたい場合の選択肢になります。
ただし、ユニットの設置場所とその電源の確保は必要になります。
【既存の録画機がPoCに対応しているとは限りません】
現在使用している録画機が同軸のカメラに対応していても、PoC給電に対応しているとは限りません。また、外付けの給電ユニットを使用する場合も、カメラとユニットの互換性だけでなく、映像信号が録画機で正常に扱えるかを確認する必要があります。
■ 機種によってはチャンネルごとにPoC給電を設定できます
もう一点、運用の幅に関わる点があります。HIKVISIONの一部のPoC対応録画機では、複数のアナログ信号の方式をチャンネルごとに接続でき、PoCについてもチャンネル単位で設定できるとされています。
この場合、電源の取れない場所のカメラだけをPoCにして、電源のある場所は通常の構成にする、といった組み合わせが可能になります。対応する録画機であれば、すべてのチャンネルを同じ給電構成にする必要がない場合もあります。
■ 誤った接続と運用上の制約
PoCを使う場合、注意しておきたい点が二つあります。
【非対応の機器を接続する場合】
HIKVISIONの一部のPoC対応録画機では、PoCに対応していないカメラや他社製のカメラを接続する場合に、PoC給電を無効にするよう注意されています。これを行わない場合、カメラまたは録画機に恒久的な損傷を与える可能性があるとされています。誤った接続は機器の損傷につながる可能性があるため、接続の前に、対応する機器と給電の設定を確認する必要があります。
【通電中の抜き差し】
HIKVISIONのPoC用給電ユニットの取扱説明書には、PoCカメラの通電中の抜き差しに対応していない旨が記載されています。機器の電源が入った状態でケーブルを抜き差しする運用は想定されていない、ということです。カメラの追加や交換を行う際は、各機器の説明書を確認したうえで手順を決めることになります。
■ 既存の設備を活かす場合
新しく配線する場合と、既存の設備がある場合とでは、判断の材料が変わります。
【既存の同軸ケーブルを活かせる場合があります】
すでに同軸ケーブルが敷設されている施設では、PoC対応の機器へ更新することで、既存の配線を活用できる場合があります。
新たにLANケーブルを敷設するには、天井裏や壁内の配線工事、配管の追加などが必要になることがあります。既存の配線を利用できれば、こうした工事を抑えられる可能性があります。
ただし、既設ケーブルの種類や劣化の状態、配線距離によっては再利用できない場合もあります。現在使用しているカメラが同軸で接続されていても、そのままPoCに対応できるとは限りません。
【新規設置と、既存設備の更新では判断が変わります】
新たに配線を敷設する場合は、カメラに必要な機能や、将来の拡張性を踏まえて方式を選定します。一方、既存設備を更新する場合は、現在の配線や録画機をどこまで活用できるかが重要になります。そのため、新規設置と既存設備の更新では、選定時に優先する条件が異なります。
入れ替えの検討については、別の記事で整理しています。
・防犯カメラの入れ替えを検討するとき|既存配線を活かす方法と判断のポイント
■ 配線工事を別で行う場合
新しく建物を建てる場合や、改修に合わせて設備を入れる場合、ケーブルの敷設や配管、電源の工事を建設工事側で行うことがあります。
このとき、押さえておきたい点があります。
【方式が決まらないとケーブルが決まりません】
PoEなら LANケーブル、PoCなら同軸ケーブルです。種類が違うため、先に方式を決めておく必要があります。同軸ケーブルについては、さらに種類があります。前述のとおり、PoCで給電する場合は、ケーブルの種類によって対応できる距離が変わります。
【配管のルートと引き込みの位置】
カメラの設置位置から録画機までのルート、壁の貫通位置、配管の径。これらも、方式と台数によって変わります。
【給電側の機器を置く場所】
録画機、あるいは電源ユニットを設置する場所には、電源が必要です。また、機器の放熱や、点検時のアクセスも考慮することになります。
【決める順序】
設計の段階で、次の順に決めておくと手戻りが少なくなります。
一、カメラの台数と設置位置
二、録画機を置く場所と、そこからの距離
三、方式(PoEかPoCか)
四、ケーブルの種類と配管のルート
五、給電側の機器の設置場所と電源
アナログとIPのどちらを選ぶかという、より大きな枠組みについては、別の記事で整理しています。
・アナログカメラとIPカメラの違い|今ある設備はどちらかから考える
保存したい日数から必要な容量を考える方法については、こちらで整理しています。
■ おわりに
カメラの設置場所に電源がない場合でも、録画機の側から電力を送る構成は成立します。PoEとPoCのどちらを選ぶかは、距離だけで決まるものではありません。既存の配線があるか、将来の増設や入れ替えをどう考えるか、機器の選択肢をどこまで広く持ちたいか。これらによって、適した方式は変わります。
整理しておくと、判断が進みます。既存の同軸配線があるなら、PoCは配線を活かせる選択肢になります。新たに配線するのであれば、規格が定められているPoEは、確認すべき範囲が整理しやすい方式です。そして、どちらを選ぶにしても、距離とケーブルの種類、必要な電力は先に確認することになります。もちろん、現場の条件によって判断は変わります。電源の位置、配管のルート、建物の構造。図面だけでは決まらない部分もあります。
難しいのは機器を選ぶこと自体ではなく、どの条件を優先するかを決めることです。費用を抑えたいのか、将来の拡張を考えたいのか、既存の設備を活かしたいのか。ここが決まれば、必要な構成も決まります。
株式会社ジェイセキュリティでは、防犯カメラの設置工事に対応しております。設置を予定している台数と位置、録画機を置く場所、そこまでのおおよその距離。この三点をお知らせいただければ、構成の考え方をご案内します。図面をいただければ、現地調査の前でもご提案が可能です。新築や改修で、建設工事側との分担を整理したいという段階からでも構いません。お気軽にご相談ください。
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※記載の内容は一般的な整理です。実際に必要な構成は、設置場所の環境、台数、既存設備の有無、建物の構造により異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※対応できる給電の方式、伝送可能な距離、対応するケーブルの種類は、機器および機種により異なります。導入前に個別にご確認ください。
※PoC給電に対応する機器の組み合わせは、メーカーおよび機種により異なります。接続可否については、各機器の説明書および販売元にご確認ください。
※非対応の機器を接続する場合の取り扱いについては、各機器の説明書をご確認ください。
※給電できる電力の上限、ポートごとおよび機器全体の供給能力は、機器により異なります。個別にご確認ください。
※既存配線の再利用可否は、ケーブルの種類・状態・敷設距離・使用する機器により異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※規格および製品の仕様は改定により変わる可能性があります。最新の情報は、規格団体およびメーカーが公表する資料でご確認ください。

