INFO 敷地にクマが入ってきたとき気づけるか|事業所のクマ対策とカメラの役割
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山や森に近い場所に事業所を構えている場合、クマは「地域の話題」ではなく自社の敷地の問題になります。朝の出勤時、駐車場から事務所までの数十メートル。日中の屋外作業。資材置き場やヤードの見回り。そして、日が落ちてからの退勤。こうした場面で、敷地内にクマがいるかどうかをいま把握できているでしょうか。
この記事では、事業所としてクマにどう備えるかを整理します。自治体が行う対策ではなく、事業者が自社の敷地と従業員に対してできることが対象です。
■ 出没は想定を超えて増えています
まず、現状の数字を確認します。
【令和7年度はクマの出没と人身被害が過去最多となりました】
政府のクマ被害対策等に関する関係閣僚会議で示された資料によると、令和7年度のクマの出没情報件数は速報値で5万776件。前年度の2万513件から約2.5倍に増加し、過去最多となりました。人身被害件数は216件、人身被害者数は238人、死亡者数は13人。被害者数、死亡者数ともに過去最多です。背景として東北の堅果類(どんぐり)の凶作等により、秋にクマ類が市街地に出没したことが挙げられています。
【今年度も、収まっていません】
令和8年4月の出没について12県が昨年同時期と比較して多いと回答しています。東北6県、新潟、山梨、三重、岡山、広島、山口なら13県です。さらに、専門家からは「令和7年秋の大量出没時に捕獲できなかった個体が、一定数、市街地等の周辺に残存している可能性がある」との指摘が紹介されています。
【市街地に出た場合の制度も変わりました】
令和7年9月1日、改正鳥獣保護管理法が施行され、「緊急銃猟」の制度が創設されました。クマやイノシシが人の日常生活圏に侵入し、一定の条件を満たす場合に市町村長が捕獲者に委託して銃猟を実施できる制度です。ただし、これは市町村が行う対応です。事業者が自ら実施するものではありません。事業所にできることは別のところにあります。
■ 現場はすでにできることをやっています
事業所として何ができるかを考える前に実際の現場で何が行われているかを見ておきます。国土交通省東北地方整備局が管内の工事現場等におけるクマ対策の事例集を公開しています。東北地整の関係者や工事の受注者、東北6県の地方公共団体、建設業関係団体に向けて現場の工夫を集約したものです。
【さまざまな対策が紹介されています】
事例集に掲載されている対策を挙げると次のようになります。
・熊鈴の携行、現場事務所への常備
・クマ撃退スプレーの携行、建設機械への常備、噴射訓練の実施
・電子ホイッスル、猟犬の鳴き声や爆竹の音が出るホーンの携行
・ラジオの携行、工事中の稼働
・管理施設内への鐘の常設
・センサーで感知し音声や光により威嚇する鳥獣害防除機器の活用
・ロケット花火、サイレン、火薬銃
・大音量スピーカーや低周波音スピーカーの設置。事例では最大130dBの音量
・狼の尿、唐辛子入りの獣よけ線香、忌避シート
・電気柵の設置
・草や藪の刈り払いによる視認性向上
・柿や栗の実の除去
・注意喚起看板、デジタルサイネージ
・クマに特化した安全教育、KYミーティングへの反映
・専門家による講話
・SNSでの目撃情報の発信
基本的な対策として出没情報の収集、熊よけグッズの携行、複数人行動の徹底、食料品を放置しないことはすでに取り組まれている状況とされています。
【それでも残る問題があります】
これらの対策には共通する性質があります。熊鈴もラジオもスピーカーも、音を出し続けることで「人がいる」と知らせ、クマを寄せ付けないようにするものです。忌避剤や電気柵も近づかせないための対策です。つまり、いずれも「遭遇しないようにする」ための備えです。
そして、これらの対策を講じていてもいま自社の敷地にクマがいるかどうかは分かりません。音を鳴らし続けても、それが効いているのか、そもそもクマが来ているのかは誰にも見えないままです。
■ カメラの役割は「威嚇」ではなく「把握」です
ここが、この記事でお伝えしたい点です。先ほどの事例集にも監視カメラは載っています。動物などの動きに反応して録画するタイプの監視カメラを設置し、警戒にあたるという事例です。ただ、カメラの役割は威嚇ではありません。クマの出没を映像として把握し、記録や通知につなげることです。
【何時に来たかが分かります】
クマは朝夕などに活動が活発になる傾向があるとされています。しかし、それは一般論であって自社の敷地に来る個体がいつ現れるかは別の話です。記録が残れば、出没が特定の時間帯に集中しているかどうかが分かります。集中しているのであれば、屋外作業の時間帯を調整する、退勤時間を早める、その時間の単独行動を避けるといった判断ができます。
【どこから入っているかが分かります】
敷地のどの方向から入り、どこを通っているか。これが分かれば、対策の打ち方が変わります。草や藪の刈り払いをどこに行うか、電気柵をどこに設置するか、スピーカーをどこに向けるか。事例集に挙げられている対策も場所を誤れば効果が出ません。
【自治体への情報提供にも活用できます】
クマの目撃情報を自治体に連絡し、自治体から関係機関等へ対応を依頼するという流れが事例集にも示されています。日時や場所、映像などの具体的な情報が残っていれば、出没状況を伝える際の資料として活用できます。
【記録がなければ判断もできません】
対策を追加すべきかどうか、いまの対策で足りているのかどうか。これらを判断する材料が記録です。音を鳴らし続けているが出没が減っていないという状況が分かれば、別の手を打つことになります。逆に記録上出没が確認されなければ、現在の対策を見直す際の材料にもなります。
■ 一人になる時間と場所
事例集の中に事業所ならではの記述が2つあります。
【交通誘導警備員の安全対策】
基本的に1人の作業となる誘導員の安全確保のため規制箇所にリモコン式の信号と軽自動車を配備し、車中から信号を操作できる環境を確保したという事例です。
【事務所駐車場での追い払い】
職員等の帰宅時のクマ被害防止のため17時前頃から事務所駐車場にて爆竹等による追い払いを実施しているという事例です。
【どちらも「人が一人になる時間」の話です】
広い敷地の端で一人で作業している。日が落ちてから駐車場まで歩く。見回りで建物の裏手に回る。こうした場面はどの事業所にもあります。そして、そのときに敷地内にクマがいるかどうかは通常は誰も把握していません。カメラによる検知は、クマが検知されたことを知らせ、現場の人が近づかないための判断材料になります。追い払うわけでも捕獲するわけでもありません。人を近づけないための判断材料を出す仕組みです。
■ 導入の方法は二つあります
HIKVISIONはAI技術を活用したクマ検知ソリューションを公表しています。実装の方法は大きく二つに分かれます。
【カメラ側で検知する】
AIアルゴリズムを内蔵したカメラが映像をリアルタイムで分析します。クマを検知するとプラットフォームや外部システムに即時通知される仕組みです。HIKVISION公式サイトの説明では、既存のIPカメラを活用し、対応するAIレコーダー側で映像を分析する構成も紹介されています。
【レコーダー側で検知する】
もう一つはAIアルゴリズムをレコーダー側に持たせる方法です。HIKVISION公式サイトの説明では、AIレコーダーを用いることで自社製または他社製のIPカメラの映像を分析でき、既存のIPカメラを交換する必要がなく、レコーダー1台で複数のカメラからの映像をリアルタイムに分析できるため、複数台のカメラをまとめて分析する構成にも対応できます。
【すでにカメラがある事業所は既存設備を活用できる場合があります】
防犯目的でカメラを設置している事業所は少なくありません。その場合、カメラを一から入れ替えるのではなく、レコーダー側で対応できる可能性があります。ただし、機器の組み合わせには条件があります。たとえばクマ検知に対応したカメラと従来のレコーダーを組み合わせる場合、レコーダー側が一定のバージョン以上である必要があるとされています。現在お使いの構成によって何ができるかは変わります。
【通知の受け取り方】
検知したアラームはレコーダーの画面で確認するほか、スマートフォンのアプリで受け取ることもできます。HIKVISIONが提供する映像クラウドプラットフォームには複数人で管理できるモードがあり、AIアラームの通知を受信する機能が利用可能とされています。
■ どこまで検知できるのか
導入を検討するうえで、精度の話は避けて通れません。
【メーカーが公表している内容】
HIKVISIONの資料では、AIプラットフォームの大規模モデルについて、特定の条件下で定期的な最適化アルゴリズムと組み合わせることで95%を超える精度に達すると説明されています。この数値はクマ検知における実環境での精度を保証するものではありません。また、OVD(Open Vocabulary Object Detection)という技術も紹介されています。検知対象をテキストで指定して対象検知に利用できる技術として紹介されています。アルゴリズム生成のコストがほぼゼロで現場への実装が速いという特長が挙げられています。
【メーカー自身が限界も示しています】
一方で、同じ資料には次の注記があります。大規模モデルにより自動的に生成されたため、場合により精度が低い可能性もあるが、現場の写真などを提供した上でアルゴリズムの最適化ができると。つまり、テキストを入力すればすぐに高精度で動くという性質のものではありません。現場の映像を使って調整していく前提の仕組みです。
【実証は進行中です】
HIKVISION公式サイトによれば、2026年、長野県飯山市内においてクマの出没リスクが高い3か所に熊検知カメラが設置されました。1か所は山手にある市の運動公園で前年にクマが出没した場所。残る2台はスキー場に設置され、設置直前にもクマが出没したとされています。パートナー企業が提供するソリューションと組み合わせて実証環境に設置され、検知性能や運用面での有効性について継続的に検証が進められている段階です。
【現時点での過度な期待は避けるべきです】
検知の精度は設置環境、距離、照明条件、季節による植生の変化などに影響されます。夜間の遠方、藪の陰、複数の動物が混在する状況では、検知できない場合も、別のものを誤って検知する場合もあります。また、検知されなかったことが敷地内にクマがいないことを意味するものではありません。人による確認やこれまでの対策を置き換えるものではありません。気づく機会を増やすための仕組みと考えるのが実態に近いと思います。
■ 検知したあと誰が何をするか
機器の話より、こちらのほうが重要です。
【事業所としてはまず人とクマを接触させないことを優先します。】
通知を受け取ったとき、事業所として取れる行動は限られています。
・屋外作業を一時中止する
・従業員に周知し、屋外への立ち入りを控えさせる
・退勤時の単独行動を避け、複数人での移動や車での送迎に切り替える
・状況に応じて自治体や警察へ連絡する
クマへの対応は事業者が独自に判断して追い払いや捕獲を行うのではなく、自治体や警察等の指示・助言に従うことが重要です。
【通知先と手順を、先に決めます】
導入時に決めておくべきことは、次の点です。
・通知を受け取るのは誰か。複数人か、一人か
・受け取った人は何をするか。誰に伝え、誰が作業中止を判断するか
・夜間や休日は、誰が受け取るか
・自治体への連絡先と、連絡する基準
これらが決まっていないと検知しても行動につながりません。
【誤検知への備えも必要です】
検知の通知が頻繁に出てそのほとんどが別の動物や人だった場合、やがて誰も確認しなくなります。導入後しばらくは検知範囲と感度の調整、そして通知内容の確認が必要になります。設置して終わりではなく運用しながら合わせていく作業が発生します。
■ 検討にあたって確認すること
【1. 自社の敷地のどこがリスクなのかを整理する】
山林と接している境界、藪や草が茂っている場所、資材や食品を扱う区画、駐車場から建物までの動線。まずは人が通る場所とクマが入ってきそうな場所を突き合わせます。
【2. 既存のカメラの構成を確認する】
カメラとレコーダーの型番、設置年、設置位置。すでにカメラがあるのであればそれを活かせる可能性があります。
【3. 通知の受け手と対応手順を決める】
機器を選ぶ前にこちらを決めます。誰が受け取り、何をするのか。夜間はどうするのか。
【4. 既存の対策との組み合わせを考える】
カメラは熊鈴やスピーカーや電気柵の代わりではありません。それらを続けたうえで記録と通知を追加するという位置づけです。
【5. 自治体の情報を確認する】
自治体が公表している出没情報、注意喚起、支援制度。地域によって状況も対応も異なります。
■ おわりに
クマ対策というと鈴やスプレー、スピーカーや電気柵といった遭遇を避けるための備えが中心になります。それは正しい順序です。そのうえで記録が残るようになると、対策の打ち方が変わります。
何時ごろ来ているかが分かれば屋外作業や退勤の時間をずらせます。どこから入っているかが分かれば刈り払いや電気柵の位置を決められます。自治体へ連絡するときにも、日時と映像という具体的な材料を示せます。そして、いま講じている対策が効いているのかどうかも見えるようになります。
これまで手探りだった部分が、確認できる状態に変わる。カメラで得られるのはこの違いです。すでに防犯目的でカメラを設置している事業所であれば機器の構成によってはカメラを入れ替えずに導入できる場合もあります。
株式会社ジェイセキュリティではHIKVISIONの正規販売代理店として、クマ検知カメラ機器のご提案から設置工事、設定までワンストップで対応しております。防犯設備士が現地の状況を確認したうえで、既存の設備をどう活かせるか、どこに何台設置すれば必要な範囲をカバーできるかをご提案いたします。
「山に近い事業所で従業員の安全が心配だ」「今あるカメラで何かできないか」といった段階からご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。
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※記載の内容は一般的な整理です。実際に必要な構成は、施設の立地、規模、既存設備の有無などにより異なります。現地確認のうえ判断が必要です。
※統計は環境省および政府の公表資料に基づく速報値です。集計時点により数値は変更される場合があります。
※法令および制度の内容は改正により変わる可能性があります。緊急銃猟をはじめとする制度の適用については、所在地の自治体にご確認ください。
※搭載されている検知機能は機種により異なります。対応可否および機器の組み合わせの条件については個別にご確認ください。
※記載の精度に関する数値は、メーカーが公表する特定の条件下での値です。実際の検知精度は、設置環境、距離、照明条件、季節による植生の変化などにより変動し、誤検知や未検知が生じます。人による確認や既存の対策を代替するものではありません。
※実証事例として記載した内容は、メーカーが公表している個別の事例であり、同様の結果を保証するものではありません。
※クマへの対応は、地域および状況により適切な方法が異なります。実際の対応にあたっては、自治体の指示および専門家の助言に従ってください。

